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ティグ溶接におけるアークプラズマ内での
金属蒸気挙動の不思議

大阪大学接合科学研究所
田 中  学

1. はじめに

ティグ溶接はアーク放電による発熱を利用して、接合部を加熱・溶融する溶接法である。アークは非消耗のタングステン電極と母材との間に形成され、その状態は1万度を越す大気圧プラズマである。図1は水冷銅板を母材に用いた純ヘリウムアークの外観写真とステンレス鋼(SUS304)を母材に用いた純ヘリウムアークの外観写真である。ステンレス鋼を母材に用いた場合、水冷銅板の場合と異なり青く蛍光している部分が存在することがわかる。この青く蛍光している部分が金属蒸気の存在を示している部分であると考えられる。ティグ溶接において、母材の溶融池から発生する金属蒸気が混入することで、アークが変化することが知られているが、アークに与える金属蒸気の影響に関する知見は未だに乏しい。

図1 水冷銅板(左)またはステンレス鋼(右)を母材に用いた
純ヘリウムシールドのティグアークの外観写真

近年、高速度デジタルビデオカメラや数値シミュレーションに代表されるように、溶接プロセスで生じる現象の可視化の進展は華々しい。筆者の研究室では、アーク溶接中の金属蒸気の動的な変化を追跡するために、アーク全体を分光イメージとして捉えることができる装置を作製し1)、アークプラズマ中の金属蒸気の挙動観察を行っている。ここでは、可視化によって現れたティグ溶接のもう一つの顔、『金属蒸気挙動の不思議』を紹介する。

2. 可視化装置の概略

図2は、筆者の研究室で作製した高速度イメージ分光システムの外観である。本システムは、対物レンズ、回折格子分光器、結像レンズ、高速度デジタルビデオカメラ、ならびに画像処理用パソコンによって構成されている。分光の波長分解能は0.4ナノメートルであり、撮影速度は毎秒500コマである。

図2 高速度イメージ分光システムの外観


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