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民間企業の教育に関わる社会貢献活動
「大阪大学接合科学研究所 国際溶接技術者(IWE)コースの例」

株 式 会 社 ダ イ ヘ ン
溶接機事業部 第二技術部
恵 良 哲 生

1. はじめに

日本製品の「品質」の高さは世界が認めるところでありますが、古来の日本の商習慣に根ざした供給者と消費者との間にある「あうんの呼吸」が世界に通じるわけではありません1)。ISO9001:1994年版で溶接は「特殊工程」と定義され、特殊工程については”認定された者(有資格者)が作業を実行すること、及び/又は工程パラメータ(工程の技術条件などの指標)の連続的な監視及び管理を行うこと“となっており、この活動記録も要求されていました。その後2000年版では「特殊工程」という言葉がなくなり、”組織は、その製造及びサービス提供の該当するプロセスの妥当性確認を行うこと”となりました。これにより、ISO9001に従った溶接管理の実施には、ISO3834(JIS Z 3400)に基づく品質要求を満たさねばならず、かつ、品質保証契約にISO9001あるいはISO9002が含まれる場合にはISO3834-2が適用され、欧州規格EN719に準拠した溶接技術者を置くことが規定されています。この溶接技術者に求められる任務と責任が、ISO14731(JIS Z 3410)に規定されています。

以上のように、海外で活動する日本企業において、国際的に通用する溶接技術者資格を取得した人材の必要性が高まってきています。大阪大学では大学院生を対象に「高度溶接技術者プログラム」を実施しており、IIW国際溶接管理技術者資格制度の最上位資格であるIWEの取得に役立つカリキュラムを提供しています2)。この国際溶接技術者コースに(株)ダイヘン(以下、当社)が外部講師を派遣していることが本メールマガジンで既に紹介されています3)。本稿では、ここでの一企業としての取組みについて、ご紹介します。

2. 国際溶接技術者コースへの取り組み

国際溶接技術者コースのカリキュラムは、溶接法・機器(モジュール1)、材料・溶接性(モジュール2)、設計・力学(モジュール3)、施工・管理(モジュール4)の4つの分野に分類されていますが、当社は高度溶接技術者プログラムとしてスタートした2010年よりモジュール1のシラバスのうち実験に関する部分他を担当しており、今年度で5年目を迎えます。表1に、過去4年間の受講者数を示します。

表1 モジュール1受講者数

  
年度受講者数(名)
201024
201120
201217
201322

担当講師は当社溶接機事業部副事業部長の上山智之で、毎年10月から1月の4ヶ月間、13:00〜16:10(休憩時間を含む)の2コマの講義を8回行っています。普段の講義は大阪大学で行いますが、この内3回は当社六甲事業所での実験であり、IIWスキームのインターンシップのポイントにもなります。大阪大学から六甲アイランドまでは距離があり、受講される学生の負担も大きいのですが、溶接工学と銘打った講座が日本の大学から無くなって以来、「溶接の総本山」と言われる大阪大学であっても最新の溶接機器が必ずしも豊富に設備されている訳ではありません。溶接機器メーカの最新の溶接電源やロボットに触れて実験・実習することは、理解度に与える影響もより大きく、また、それぞれの分野の専門家や実務経験豊富な当社技術者が直接サポートできるメリットがあります。

普段の座学では、各種溶接法の機構やアーク現象、またそれらの溶接法を実現する機器の動作原理の解説が主体になりますが、より興味を持って講義に参加してもらえるよう、逆質問を投げかけたり、教科書に書いていない業界の裏話などの四方山話を差し込んだりして、講義内容が印象に残るよう努めています。例えば、マグ溶接電源の制御方式がサイリスタ制御式からデジタルインバータ制御式へと変遷した背景や現状の説明、また各種溶接法が開発された当時の背景・経緯に触れたりしています。結果として脱線することも多く、時には講義時間が足らなくなることもあるようです。ここからは3回の実習・実験の様子について触れたいと思います。


(WE-COM会員のみ)