WE-COM トップへ |

ようこそ  様 | ユーザ情報変更 | ログアウト

溶接アークと溶融池形成シミュレーション

大阪大学大学院工学研究科
荻 野 陽 輔

1. はじめに

アーク溶接プロセスは、アークプラズマをエネルギー源として用いる材料を溶かしてつなぐものづくりの基盤技術の一つである。アークプラズマは非常に高温(20000℃程度)で強烈な光を発しており、直接目視することはできない。さらに、アーク溶接中には未溶融の電極・母材(固体)、溶融した電極・母材(液体)、シールドガス(気体)、アークプラズマ(プラズマ)という異なる状態の物質がわずか数cm3という狭い領域に混在している。これらは互いに影響を及ぼしあい、アーク溶接現象は非常に複雑なものとなる。アーク溶接プロセスの高度化達成にむけて課題を克服していくためには、プロセス中に起こっている現象を正しく理解し、これまで感覚的に捉えられてきたものを定量的に評価し、適切にコントロールしていくことが必要と考えられる。

このような背景を踏まえて、近年ではアーク溶接現象を可視化する取り組みが盛んになされている。可視化手法として高速度カメラを用いたものや分光分析など実験観察に基づくものも多数あるが、本稿においては、シミュレーションモデルを用いた数値解析的手法によりアーク溶接現象を可視化する取り組みについて紹介する。特に、著者らの研究グループにおいて開発しているガスメタルアーク溶接における熱源(アークプラズマ・溶滴)モデルならびに溶融池モデルに焦点を当て、シミュレーションモデルの中身とそのアウトプットについて説明する。

2. シミュレーションモデルの中身

ここでは、アークプラズマや溶融池などをモデル化しシミュレーションを行う際の概要について説明する。詳しい説明は、著者らの既報を参照されたい1,2)

まず、計算機を用いて数値シミュレーションを行う際には計算対象を有限個の離散領域に分割する必要がある(メッシュ分割)。分割の方法は種々あるが本研究では図1に示すように、計算対象を矩形の領域(2次元モデルでは長方形、3次元モデルでは直方体)に分割している。この分割したひとつひとつの領域における物理量(例えば温度や速度など)を計算することとなるため、領域が細かく配置されていれば、それだけ細かい(解像度の高い)情報を得ることができるので、シミュレーション精度が高まるといえる。しかし一方で、シミュレーションに要する時間やメモリが増加する。つまり、数値シミュレーションを行う際には、シミュレーション結果に求める精度に応じてメッシュ分割を工夫する必要がある。

図1 メッシュ分割