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静的試験
―引張試験、曲げ試験、硬さ試験―

3.曲げ試験

曲げ試験では、板状の試験片を所定の半径まで曲げて、引張応力を受けた湾曲部に生じる割れ等を観察し金属材料の変形能を調べる。溶接継手試験体の場合、前項に述べたような引張試験を行っても、試験片は母材と溶接金属の性質の差異や、開先、ルート間隔、入熱、積層など種々の溶接条件の影響などを受けてばらつきがあるため、材料の伸びを正確には測定できない。その欠点を補うものとして、曲げ試験を活用する。

曲げ試験方法には、大きく分けて押し曲げ法、巻き付け法、Vブロック法(図6)の3つの方法がある。押し曲げ法は万能試験機を用いる場合に、巻き付け法は手工具を用いた場合に、Vブロックは材料規格の指示がある場合などに行う。


図6 曲げ試験方法

押し曲げ法において、半径Rの押し治具を用いて、板厚hの試験片を半円形状に曲げた場合の試験面(引張応力を受ける側)の引張ひずみは以下の(1)式で求められる。


  • ε:表面の引張ひずみ
  • R:曲げ半径
  • h:試験片厚さ

(1)式によると、曲げ試験による試験面の引張ひずみと曲げ半径(板厚の倍数)の関係は、図7の様になる。 試験片の曲げ半径は規格や材料によって異なるが、例えば、試験片厚さの2倍の曲げ半径で試験したとき、試験面の引張ひずみεは20%となる。


図7 曲げ半径と試験面にかかる引張ひずみ

ただし、硬さが不均一な試験片、つまり母材、熱影響部、溶接金属部によって硬さの変動が大きい試験片の場合は、柔らかい部分にかかる引張ひずみが(1)式の値よりも大きくなることがある。このとき溶接金属が母材に対して軟らかい溶接継手や、熱影響部が軟化する溶接継手の曲げ試験を行うと、軟らかい部分に延性的な割れが発生する可能性がある。この様な割れは、軟質部が隣接部よりも過剰に伸びたため窪んでおり判断ができる6)。また、例えば、9%Ni鋼の溶接継手の溶接材料にNi合金が用いられている場合、母材と溶接部の伸びが異なるため、溶接線に平行に応力がかかる縦曲げ試験が一般的に用いられる。

溶接継手の曲げ試験では、溶接欠陥が試験面に顕在化して観察が可能になる。一例として写真1に、裏曲げ試験後の試験面の外観写真を示す。この試験片では、曲げ部表面の溶接金属に沿って融合不良による割れが観察される。


写真1 曲げ試験後の試験片外観


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