4.硬さ試験
金属材料の硬さ試験としてよく用いられるロックウェル硬さ試験、ブリネル硬さ試験、ビッカース硬さ試験は、硬さ試験の内でも「押し込み式硬さ試験」に分類されるものである。これは、先端が球や円錐などの形状をした圧子を試験片に押し込み、そこにできた圧痕の深さ、またはその面積の大小から硬さを算出する試験方法で、試験片の表面に押し込んだ圧痕が大きいほど硬さの値は小さくなる。ただし、硬さ試験の種類によって使用する圧子や硬さの値の算出方法が異なる。それぞれの硬さ試験の原理と測定方法を、以下に簡単に説明する。
(1)ロックウェル硬さ試験
ロックウェル硬さ(HR)試験は頂角120°のダイヤモンド円錐か、鋼球を先端に持つ圧子を所定の荷重で試験片に押し込み、その押し込み深さから(2)式を用いて硬さを算出する試験法である。
- N:スケールに固有の定数
- h:最終の圧子深さと初期の圧子深さの差(mm)
- S:換算定数
(2)式のNとSは、圧子の種類と試験力で定義される「スケール」によって異なる定数である。スケールごとに異なる定数を持つが、先ず基準荷重を加え、そこから更に試験荷重を加え、再び基準荷重に戻した時の圧子の侵入深さの差を測定し、その値から硬さを算出するという手順(図8)はどのスケールを用いる場合でも共通である。
図8 ロックウェル硬さ試験手順
Cスケール(ダイヤモンド円錐の先端を持つ圧子を用いる)でロックウェル硬さ試験を行った後の圧痕を、レーザー顕微鏡を用いて観察したものを図9に示す。図9の上段は、圧痕を真上から見た様子、下段は圧痕から得られた深さ情報を3次元に再構築し、そのモデルを側面から見た様子である。
図9 ロックウェル硬さ試験の圧痕