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被覆アーク溶接現象

株式会社神戸製鋼所
栗山 良平

1. はじめに

近年のアーク溶接は、溶接ロボットなどによる自動化も含め、ワイヤを用いる溶接法による合理化が進み、アーク溶接法の中で最も歴史の古い被覆アーク溶接の適用事例は、国内では漸減傾向にある。一方、被覆アーク溶接は簡素な溶接電源設備があればアーク溶接が可能な溶接法であり、機動力を重要視する溶接適用箇所に限らず、溶接品質の信頼度の高さという観点からも、造船、建築鉄骨、エネルギー、産業機械などの幅広い業種分野において、現在も不可欠な溶接法である。

日本工業規格 JIS Z 3211「軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒」では溶着金属の機械的性質や化学成分だけでなく、被覆剤系統の種類により記号が多種に分類されている。これは、被覆アーク溶接法は簡素な溶接法であるがゆえに、溶接金属に要求される品質、用途、目的に応じて、適用する溶接材料を適正に選択できるよう、多様な種類が存在していると解釈していただきたい。

本稿では、被覆アーク溶接棒の被覆剤の種類と特徴、ならびに、被覆アーク溶接中に起こる物理現象を解説するとともに、被覆アーク溶接現象を可視化した一例を紹介する。

2. 被覆剤の種類について

被覆剤の種類の系統は、イルミナイト系、高酸化チタン系、ライムチタニヤ系、高セルロース系、低水素系ならびに鉄粉低水素系などに分類されている。JIS Z 3211に該当するような軟鋼ならびに高張力鋼用の被覆アーク溶接棒は、いずれの系統の被覆アーク溶接棒も同等成分の心線を適用していることが一般的であり、被覆剤の種類による被覆剤配合の違いで、性能や特徴を異なるものにしている。

被覆系統の異なる各種被覆アーク溶接棒の溶着金属の酸素量、窒素量ならびに拡散性水素量の一例を表1に、被覆剤配合のおもな特徴を表2に、溶接性能のおもな特徴を表3に示す。


表1 各種被覆アーク溶接棒の溶着金属の酸素量、窒素量ならびに拡散性水素量の一例


表2 各種被覆アーク溶接棒の被覆剤配合のおもな特徴


表3 各種被覆アーク溶接棒の溶接性能のおもな特徴


被覆剤の系統を大別すると、低水素系ならびに鉄粉低水素系以外の系統を総称し、非低水素系と呼ぶことが多い。軟鋼の被覆アーク溶接棒の用途は、溶接金属の水素量が弊害を招くような構造物に使用しないことが多く、非低水素系に分類される溶接棒が広く適用されている。しかしながら、490MPa級鋼用以上の高張力鋼や、低温用鋼・耐熱鋼などの低合金鋼では、溶接金属の拡散性水素量上昇が溶接構造物に低温割れなどの弊害を招くことを懸念し、低水素系ならびに鉄粉低水素系が適用されている。