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FSWの基礎と接合の革新

大阪大学接合科学研究所
藤井 英俊

1. 摩擦攪拌接合(FSW)の原理

摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding)は、1991年に英国のTWI(溶接研究所)で開発された接合技術で、図1に示すように、ツール(Tool)と呼ばれるφ10〜20mm程度の棒状の工具を高速で回転させながら材料と接触させ、発生する摩擦熱を利用して接合する接合法である1,2)図2で接合中の動画をご覧いただこう。動画のように、まず最初に、高速で回転するツールを接合界面に向けて押し付ける。ツール先端の突起部(プローブ)を試料である材料(アルミニウム合金)の中に挿入し、幅広の部分(ショルダ)が材料に接したら、界面に沿って移動させる。この時、材料は溶けずに固体の状態であるのがポイントで、FSW特有の奇麗な表面が得られている。


図1 摩擦攪拌接合と前進側、後退側

図2 FSWの動画
(図をクリックすると動画が再生します)

発明者のW. M. Thomasは、当初、摩擦を用いて円柱状の材料を板材に肉盛りする研究をしていたところ、偶然、ツールを消耗させずに板材を接合することができることを発見したと言われている。このように、大発明は多くの場合、偶然から生まれるようである1)

本接合法では、被接合材の最高到達温度が融点に達しないため、接合部における強度低下がこれまでの溶融溶接に比べて小さいのが特長で、その優れた特性から、鉄道車両、土木構造物、船舶等の様々な産業分野で幅広く実用化されている2-12)。これまで、対象の材料はアルミニウムや銅合金が中心であったが、近年、鋼や異種金属接合においても実用化されてきている13)。さらに2015年にはFSWの基本特許が切れたことから、ランニングコストが安く、工程内の省スペース化、良好な作業環境などの特徴を活かし、さらなる実用化が増えていくものと期待されている。

上述のように、摩擦攪拌接合は、英語ではFriction Stir Weldingと言うので、頭文字をとって「FSW」も幅広く言われている。中国語では、攪拌摩擦焊であるから、「攪拌」と「摩擦」の順番が日本語と逆転しており、興味深い。日本語では、いくつかある摩擦接合法の中の摩擦攪拌接合と言う場合、共通である「摩擦」を先に言い、異なる部分である「攪拌」を後に言うが、中国語では、異なる部分である「攪拌」を先に言い、共通である「摩擦」を後から言うという文法的な違いと、単に逆転させた方が発音しやすいということが理由のようである。