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サブマージアーク溶接の可視化

熊 本 大 学
古 免 久 弥

1. はじめに

サブマージアーク溶接は船舶や橋梁など大型構造物の建造に用いられる溶接プロセスであり、太径ワイヤを用いた大電流溶接で得られる高い溶着速度によって能率よく施工できる1)図1にこのサブマージアーク溶接の概略図を示す。図は溶接線に沿った縦断面を示しており、溶接部や熱源であるアークプラズマは粉体のフラックスや、フラックスが溶融したスラグに覆われている。これはサブマージアーク溶接の特徴であり、フラックスやスラグはアークプラズマ近傍で生じるスパッタやヒュームをトラップすることで外部への飛散を抑えたり、風などの影響から溶接部をシールドしたりする役割を果たしている。またスラグには、熱源が通過した後も溶接ビードを覆うことで溶接ビード表面を大気から保護する効果や、ビード形状を調整する効果、含有されている様々な成分によって溶接金属を精錬する効果がある。フラックスやスラグはこのようなメリットをもたらす一方で、アークプラズマや溶滴の挙動、施工後に製品の一部となる溶融池の流動など溶接中に生じる諸現象を見ることができず、溶接現象がブラックボックスになってしまうといったデメリットが生じる。


図1 サブマージアーク溶接中のフラックス内部の模式図

これまで熟練した作業者の経験と勘によって用いられてきたこの溶接プロセスに対し、近年デジタル制御電源が開発され普及したことで、さらに細やかな電流電圧波形制御が可能になった2)。しかしながら、肝心の制御対象であるアークプラズマや溶滴の挙動を外部から観察することは前述の通り困難であるから、電流電圧波形に対するこの溶接現象の振舞いには未だ不明な点が多く残されている。そのため作業者は施工後の溶接部形状だけを頼りに、デジタル制御によって増えたパラメータの中から試行錯誤的に最適な溶接条件を探さなくてはならず、時間的・金銭的に多くのコストが必要となる。

この問題を解決し、さらに高能率な施工を実現するため、国内外ではサブマージアーク溶接現象の可視化とメカニズムの解明を目的とした実験観察や数値計算が行われている。本稿では未知のサブマージアーク溶接現象を“観る”ことを目的とした研究例をいくつか取り上げ、それらの研究で得られた知見を紹介する。