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エレクトロスラグ溶接の観える化

大阪大学大学院工学研究科
荻 野 陽 輔

1. はじめに

エレクトロスラグ溶接プロセスは、大入熱、高溶着な溶接プロセスであり、鉄骨や造船などといった大型構造物の施工に用いられる。エレクトロスラグ溶接プロセスの概略図を図1に示す。溶接を行う開先内に溶融スラグ浴を形成し、この中へと溶接ワイヤを送給する。溶接ワイヤは溶融スラグよりエネルギーを受け取り溶融し、開先を埋め溶接部を形成する。通常、溶接方向は上進方向であり、溶接部は母材もしくは水冷ジグで四方を囲まれたものとなっている。エレクトロスラグ溶接は、母材やワイヤを溶融させ溶接部を形成するエネルギーとして、溶接ワイヤから通電される電流によって生じる溶融スラグの抵抗発熱(ジュール発熱)を利用する溶接法である。生産現場においては、溶接部の強度やじん性などといった機械的特性が要求を満たすように、入熱量が制限された中で、溶込み不足などの欠陥のない溶接部を形成することが求められ、溶接条件は技術者の経験にしたがって決定、調整がなされている。


図1 エレクトロスラグ溶接の概略図

エレクトロスラグ溶接プロセスは、四方を母材やジグで囲まれているという、その原理から溶接現象を直接観察することが困難である。1970年代に安藤らによって、精力的な研究がなされており、温度分布や電流分布、溶接条件の影響など、エレクトロスラグ溶接の基礎的な知見がまとめられている[1-4]。しかしながら、溶融部の構造などといったプロセスの最中における内部情報は想像の域を脱することはできておらず、溶込みの形成メカニズムなど溶接の品質に直結する溶接現象は、完全に明確になっているとは言えないのが現状である。

著者らは、このようなエレクトロスラグ溶接の現状に対して、その溶融部の直接的な観察を通じて、内部構造とその挙動の観える化、溶込み形成メカニズムの観える化にトライした[5]。本稿では、その結果の一部を示す。