大阪大学 接合科学研究所
平岡和雄、田中学
物質・材料研究機構 構造体化グループ
中村照美
株式会社 IHI 技術開発本部
山岡弘人
ミグ溶接は、ティグ溶接と同様に不活性ガス(アルゴンやヘリウム)をシールドガスとして用いるアーク溶接法であり、高品質な継手性能を得ることができる。特にミグ溶接は消耗電極(ワイヤ)を用いるため、ティグ溶接に比べて高能率な施工が可能になる点で優れている。しかしながら、現状アルゴン100%のミグ溶接はアルミニウム材への適用しか実用化されておらず、若干の酸素や炭酸ガスを添加しないと鋼材への適用は不可能とされてきた。
本報では、鋼材への適用を可能とするアルゴン100%での新ミグ溶接法の開発経緯を概説する。また開発した「新ミグ溶接法」の施工性能、実用化のための継手(部材)での各種性能確認試験結果について紹介する。
1. はじめに
鋼材は活性ガス(例えば80%アルゴン+20%炭酸ガスの混合ガス)を用いたマグ溶接で安定な溶接施工が実施されているが、純アルゴンガスシールドのミグ溶接を行うと、図1に示すように、平板上では蛇行したビードになったり、開先内ではアンダーカットや開先底部の融合不良などの溶接欠陥が多発し、健全なビード形成が困難である。
(a) ビードオンプレート溶接
(b) V開先内溶接(表面側)
図1 純アルゴンガスシールドにおけるミグ溶接ビード