- 接合・溶接技術Q&A / Q01-01-02
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Q780MPa級鋼の突合せ溶接を行う場合,板厚20~40mm,下向姿勢,立向姿勢溶接が必要ですが,どのような溶材を選ぶべきか教えて下さい。
高張力鋼用溶接材料に必要な特性としては,次の4点が挙げられる1)。
① 溶接金属の強度・延性が鋼材の規定最小値以上であること
② 溶接金属の靱性が要求値を満たすこと
③ 溶接割れ感受性が小さいこと
④ 溶接作業を容易に行えること
上記①,②の溶接金属の機械的性質とくに靭性は,図1に示すように溶接入熱量に依存するので2),能率面からは鋼材の限界冷却速度あるいは限界入熱量に匹敵するような,広い施工条件範囲を持つ溶接材料の選定が大切となる。このことは上記④にも関連し,条件範囲が広く溶接作業を容易に行えること自体,欠陥の発生を防止して全体としての能率性を高めることにつながる。
さらに,耐割れ性が優れていることが重要となる。鋼材熱影響部に発生する遅れ割れに対しては,鋼材Pcm・溶接金属水素量・拘束度・溶接金属強度が3),また,図2に示すように5)多層溶接金属に発生する遅れ割れには溶接金属強度・溶接金属水素量・拘束度が関与する4,5)。したがって,割れ防止の観点からは,超低水素系であるとともに強度が高すぎない溶接材料の選定が必要である。溶接方法としては,SMAW,SAW(下向のみ),GMAW,GTAWいずれも適用可能であるが,ソリッドワイヤを用いるGMAWとGTAWが水素量が少なく耐割れ性が優れている。
参考文献
1)日本規格協会:新版・溶接材料選択のポイント,(1987)2)原ら:高強度鋼用高靱性溶接材料の現状と今後の課題,溶接学会溶接構造研究委員会資料,(1993.11)
3)JSSC,Vol.8,No.80,p.22,(1972.8)
4)矢竹ら:溶接学会誌,Vol.50,No.3,p.75,(1981)
5)奥田ら:IIW Ⅱ-1072-86,(1986)
〈原 則行〉