接合・溶接技術Q&A / Q01-01-07

Q304タイプステンレス鋼のすみ肉溶接および突合せ溶接に最適な溶接材料は何ですか(t=10~20mm)。溶接部の耐食性を高めておきたい場合の処置法はありますか。

304タイプステンレス鋼として,JIS G 4304-2005の熱間圧延ステンレス鋼板および鋼帯SUS304, SUS304Cu, SUS304L, SUS304N1, SUS304N2, SUS304LN, SUS304J1, SUS304J2の8種類がある1)

この中で,一般的に炭素含有量0.08%以下と0.03%以下のSUS304,SUS304Lが溶接用鋼材として多く使用されている。

鋼材の炭素含有量が0.08%以下のSUS304には,被覆アーク溶接棒の例では,JIS Z 3221のES308またはES308Lが使用される。

鋼材の炭素含有量が0.03%以下のSUS304Lの場合は,被覆アーク溶接棒の例では,JIS Z 3221のES308Lが使用される。

この理由は,鋼材および溶接金属の炭素含有量が耐食性に影響を及ぼし,炭素含有量が0.08%以下のSUS304でも溶接部の耐食性を考慮してES308Lを使用することがある。選定理由として,炭素含有量の多いものほどCr炭化物の析出が多く,Cr炭化物周囲のCr欠乏層形成が粒界腐食,孔食の発生原因と言われている。

また,最適な溶接材料として,最近は,ステンレス鋼アーク溶接用フラックス入りワイヤJIS Z 3323のTS308,TS308Lが,能率や作業性が良好なため,主に使用されている。

溶接部の耐食性を高めておきたい場合の処置方法としては2)

① 炭素含有量を 0.03%以下に抑えた低炭素溶接材料の使用

② 溶接入熱の制限

③ ニオブもしくはチタン添加により炭素の安定化を図った安定型溶接材料の使用

④ 溶接後,1323~1373Kでの固溶化処理

などが有効である。

また,表1は,YS308の溶加材を使用して,ティグ溶接にて各パスごとに空冷した場合と,水冷した場合の,溶着金属の 65%沸騰硝酸に対する耐食性を示したものである。この結果から,溶接時のパス間温度を管理することも必要である。

参考文献

1)(財)日本規格協会:日本工業規格,G 4304-2005

2)(社)溶接学会編:溶接・接合便覧,丸善(株),pp.953-954

3)乾:メンテナンス,No.29,技術評論社,p.26,(1982)

〈乾   誠 / 2012年改訂[規格]〉

このQ&Aの分類

溶接材料

このQ&Aのキーワード

ステンレス鋼

Q&Aカテゴリ一一覧