接合・溶接技術Q&A / Q01-01-13

Q溶接棒の使用前,使用中の吸湿に対する注意事項として特に何に気をつければよいのでしょうか。

被覆アーク溶接棒のフラックスは,多孔質であり水分が吸着しやすい性質を持っている。そのため,高温多湿雰囲気に放置した場合,あるいは梱包したままの状態でも長期間保管した場合,フラックスは吸湿する。図1に高温多湿雰囲気に放置した場合の代表的な溶接棒の吸湿曲線例を示す。

溶接棒が吸湿すると,アーク力が強くなり,スラグの被りが不安定になったり,スパッタが増加する等,溶接作業性が劣化する。また,特に低水素系溶接棒の場合は溶着金属の水素量増加による耐割れ性の劣化や,ブローホール,ピット発生の原因ともなる。したがって,溶接棒の吸湿に対する注意は重要である。

以下に溶接棒の使用前,使用中の吸湿に対する注意事項を列挙する。

(1) 使用前

① 保管時の注意

●雨,雪等に直接当たらないよう,屋内に保管する。

●高温多湿な場所を避け,床面,壁面,に直接密着させず,風通しをよくして保管する。

●溶接棒の種類,サイズ等,整理して管理を行い,製造年月日の古いものから使用する。

●悪天候時の屋外運搬を避けるか,またはやむを得ない場合は防水対策を施し速やかに運搬する。

●溶接棒の運搬時は落下,荷崩れ等,梱包の破損を招くことのないように気をつける。

② 溶接棒の乾燥

上記の通り,吸湿した溶接棒を使用すると溶接作業性や溶接金属の性能が劣化するので,溶接棒は使用前に再乾燥することが望ましい。乾燥は時間よりも温度の影響が大きく,低すぎる温度では十分に吸湿水分を除去することができない。一方,高すぎる温度ではガス発生剤の分解や合金元素の酸化消耗が起こり,かえって溶接棒本来の性能を損なうケースもある。したがって,乾燥は各溶接材料メーカが推奨する条件で行う必要がある。なお,WES 2302には,溶接棒の種類ごとに各社の乾燥条件を無理のない範囲で統一した標準乾燥条件(表1)が記載されているので,参考にされたい。

(2) 使用中

いったん乾燥した溶接棒でも,大気中に放置すれば再び吸湿が進む。したがって,乾燥後は速やかに使用するか,適当な保温容器に保管することが望ましい。一般に,乾燥後許容放置時間の目安は非低水素系溶接棒で6~8時間,低水素系溶接棒で2~4時間である。また,長時間乾燥および繰返し乾燥を過度に行うと,溶接中に保護筒が欠ける等の溶接作業性の劣化現象が認められるようになるため,溶接棒の乾燥量はその日に使用する量を目安とすることが望ましい。

 

参考文献

1)(株)神戸製鋼所溶接棒事業部:溶接棒各論,福田印刷工業,p.143,(1964)

2)(社)日本溶接協会:WES 2302 溶接材料の管理指針,pp.1-9,解1-20,(1995)

3)(社)溶接学会編:溶接・接合技術,産報出版(株),pp.61-66,(1993)

4)関口春次郎,安藤清一:溶接棒,産報出版(株),pp.294-300,(1955)

〈笠井  登 / 2012年改訂[規格]〉

このQ&Aの分類

設備計画

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溶接棒の吸湿製品名:被覆アーク溶接棒材質:炭素鋼施工法:SMAW

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