- 接合・溶接技術Q&A / Q02-01-16
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Q2電極サブマージアーク溶接機で施工する際,電源結線方法の差が溶接結果に影響を与えるでしょうか。
サブマージアーク溶接を多電極化すると,溶接の高能率化と品質向上に効果的であり,現在2電極,3電極,4電極などと種々利用が計られている。溶接電源にも交流同志の組合せの他,交流と直流を組み合わせるなど工夫もこらした例も多い。ここでは,最も一般的な交流2電極の場合について,代表的な結線方法とその特徴を説明する。
スコット結線,V結線,逆V結線がその代表例であるが,図1に示すように結線方法により電極間の位相差を変えることができ,スコット結線では90°,V結線では60°,逆V結線では120°となる。それぞれの結線における特徴や用途について,以下に述べる。
(1) スコット結線
溶接電源の一次側(3相側)の位相差は120°で平衡しているが,溶接電源自体の使用率は,定格の85%以下で使用しなければならない。一方,二次側については,一般にアークの発生している2電極間の位相差が大きくなるほど,幅が狭く,余盛が高く,溶込みの深い溶接となる。スコット結線の電極間位相差は90°なので溶接部の形状も中庸を得て,最も一般的な結線方法となっている。
(2) V結線
図1でも分かる通り,V結線では溶接電源の一次側(3相側)の位相差は平衡していないが,溶接電源自体の使用率は定格通りに扱って差し支えない。
二次側2電極側の位相差は60°と小さいので,溶込みが浅めとなり,比較的薄板の高速溶接に適している。V結線におけるアース電流(二次側の母材側配線に流れる電流)は図1に記してある通り,溶接電流より高くなるので,配線には注意がいる。また,アース電流による磁気吹きの影響にも気をつけねばならない。
(3) 逆V結線
V結線と同じく溶接電源の一次側(3相側)の位相差は平衡していない。二次側2電極間の位相差は120°と大きいので,溶込みが深くとれ,厚板の大電流溶接に適している。大電流溶接では磁気吹きに悩まされることが多いが,二次側の各相に流れる電流がバランスしており,磁気吹きの影響を少なくする結線である。
参考文献
1)(社)日本溶接協会 船舶・鉄構海洋構造物部会溶接施工委員会:溶接施工“Q&A”,p.91,(平成3年3月)〈飯塚 真平〉