- 接合・溶接技術Q&A / Q02-03-02
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Qオーステナイト系ステンレス鋼配管の外面に保温材をまいて使用していたところ,数年たって点検したら溶接熱影響部に割れが発生していました。この原因と防止策について教えて下さい。
オーステナイト系ステンレス鋼の保温材の下での割れ問題は,外面応力腐食割れ(ESCC;External Stress Corrosion Cracking)と呼ばれ,下記条件下で生じることが知られている。
(1) 50~200℃の温度範囲
表1に種々の温度条件下での割れ発生頻度を示す。表に示すように80~100℃の温度範囲が最も危険と言われている。
(2) マグネシア,ウレタンなど塩化物を多く含む保温材を用いた場合
(3) 低炭素型以外の通常のオーステナイト系ステンレス鋼を適用した場合
(4) 冷間加工後熱処理されて鋭敏化が著しく進んだ状態
例えば,例間加工した鏡板を使用した圧力容器の場合,鏡板の胴板の間の溶接線の鏡板側溶接熱影響部において割れの発生が著しい。このような部位では,溶接により鋭敏化が著しく進むため保温材がなくてもESCCは生じ得る。
割れの原因は,保温材中のまたは外部から侵入した雨水中に含まれる塩化物による割れ(塩化物応力腐食割れ)である。
対応策として下記方策が有効である。
(1) 環境構造面からの対応
●水の侵入防止
●塩化物含有量の低い保温材の採用
(2) 材料面からの対応
●低炭素型ステンレス鋼の採用
参考文献
1)大久保勝夫:オーステナイト系ステンレス鋼の外面応力腐食割れとその対策,配管技術,1月号,p.132,(1983)〈石井 邦雄〉