接合・溶接技術Q&A / Q02-03-07

Q二相ステンレス鋼(SUS329J3など)の特性および溶接施工上の留意点を,オーステナイト系(SUS304など),マルテンサイト系(SUS410など)と比較して教えて下さい。

二相ステンレス鋼は,フェライトとオーステナイトの2種類の金属組織が混在している。代表鋼種にはSUS329J3L(22%Cr-5%Ni-3%Mo-N-低C),SUS329J4L(25%Cr-6%Ni-3%Mo-N-低C)がある。二相ステンレス鋼はCr含有量が高いため耐食性(耐海水性)に優れ,高強度である。この特徴を生かして化学プラント,海水熱交換器などに使用されている。

二相ステンレス鋼の組織は,耐食性の観点からフェライトとオーステナイトが1:1となるよう成分設計されている。しかし,溶接熱履歴を受けると図11)に示すような組織変化を生じ,溶接熱影響部でのオーステナイト量は低めとなる。このような相バランスのくずれによって,じん性,耐食性は低下する傾向にある。一例として,フェライト量と衝撃値の関係を図22)に示す。

二相ステンレス鋼の溶接は,オーステナイト系ステンレス鋼とほぼ同条件で行うことができる。しかし,上述の通り溶接熱履歴によって耐食性やじん性が劣化する場合もあるため,多層溶接では比較的低入熱が好ましい。また,マルテンサイト系ステンレス鋼の場合のように,予熱を必要としないが,フェライト相が増えると水素ぜい化によって割れる(低温割れ)ことがあるのでシールドガスに水素を混合するガスシールドアーク溶接法は避けるべきである。

参考文献

1)西本:最近のステンレス鋼溶接施工技術の実際とその応用に関する講習会,溶接協会特殊材料研究委員会,(1995)

2)神戸製鋼技報,No.0386-103,(1986)

〈結城 正弘 / 2012年改訂[図SI単位]〉

このQ&Aの分類

ステンレス鋼

このQ&Aのキーワード

溶接施工法

Q&Aカテゴリ一一覧