- 接合・溶接技術Q&A / Q02-03-15
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Qチタンおよびチタン合金の融接に使用される主な溶接方法とその溶接装置の必須条件について教えて下さい。
チタン・チタン合金の溶接には,
●イナートガスアーク溶接
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ティグ溶接(TIG welding) |
ミグ溶接(MIG welding) |
●プラズマ溶接(Plasma arc welding)
●電子ビーム溶接(Electron beam welding)
●レーザビーム溶接(Laser beam welding)
●抵抗溶接(Resistance welding)
などがある。
チタン・チタン合金は,比較的低温でも活性な金属のため,侵入型元素(酸素,窒素,水素,炭素)による汚れにより脆化する。特に,溶接中に大気中の酸素,窒素などのガスと反応すると,溶接金属は著しく硬さを増し,伸びを減少して脆くなる。
そのために,溶接前の清掃・脱脂を・アセトン・メタノールで開先内および板表面を十分に行い,汚れを防止して溶接を行う。
シールドガスとしては,不活性ガスのアルゴン(JIS K 1105)ガス純度>99.99%,ヘリウムまたはアルゴン/ヘリウム混合ガスが用いられるが,通常はコストの関係よりアルゴンガスを使用して溶接を行う。
シールドは,トーチシールドのみでは,溶接金属が350℃以下になるまでに冷却(350℃を越えると酸化着色)することができないので,補助シールドとしてアフターシールド治具を用いるとともに,バックシールド治具を併用して溶接を行う。
また,アフターシールド治具およびバックシールド治具は,溶接部の形状に適応したものをその都度作成する必要がある。
(1) ティグ溶接(TIG溶接)
通常一般的に使用される溶接法である。溶接電流,溶接速度,パス数,タングステン電極径,溶加材の径,シールドガスの流量に注意しなければならない。
この場合極性は,直流棒マイナスで行う。電極棒の先端頂角は,40~43°になるようにして行うのが好ましく,交流は用いない。
これは,タングステン電極が溶接金属に溶融し,融点の低い共晶(W-Ti)生成物を生じるからである。
トーチのガスノズルはガスレンズ付きを用いた方がよい。これは,通常のガスノズルであれば溶接面で層流になるが広範囲のシールド確保が困難になることによる。ウイビング溶接は行わない。
ティグ溶接装置としてチタン溶接の場合特に要求されることは,溶接アークをタッチスタートさせないための高周波発生装置を有し,さらにアーク消滅後電極および溶接部が冷却途中で酸化しないよう一定時間十分にシールドガスを流すためのタイマを具備し,かつ溶接姿勢のまま電流を切るため,ペダルスイッチの利用などの工夫をする必要がある。
(2) ミグ溶接(MIG溶接)
ミグ溶接の場合の電源特性は,直流棒プラスの定電圧特性を用いる。ティグ溶接の場合と異なって,電極に細径のソリッドワイヤを用いて溶接を行う。
細径のソリッドワイヤを用いるために,電流密度および溶融効率が高く,溶込みの確保と,溶接速度が向上でき,高能率の溶接ができるために厚板の溶接に利用される。
しかし,電流値も高く溶接速度も早くなるので,ガスシールド治具はより大きくかつ広い適切なものを使用しなければならない。
(3) プラズマ溶接
通常のプラズマ溶接は,アークを集束させる目的でセンターガスに水素ガスを用いるが,チタンは水素を吸収すると脆い水素化物が溶接部に形成するために,センターガスには純アルゴン,ヘリウムまたはその混合ガスを使用し,水素ガスは使用してはならない。
プラズマアーク溶接の継手性能は,ティグ溶接と同等であり,溶込みが深く,溶加材が不要であることから,薄板の溶接に適した溶接法といえる。
(4) 電子ビーム溶接
大気を遮断した真空容器内で溶接するので,チタンの溶接にとっては理想的な溶接法と考えられるが,被溶接部の寸法形状の制約があるとともに,設備を導入するにあたって高価格が問題となり,特別な場合を除いて必ずしも普遍的な溶接方法とはいえない。
〈長谷 泰治〉