- 接合・溶接技術Q&A / Q02-03-16
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Qチタンおよびジルコニウム製化学工業用機器を製作する場合,ステンレス鋼などの場合と比較して溶接設計上どのような点に留意すべきか教えて下さい。
(1) チタンやジルコニウムは炭素鋼・ステンレス鋼と溶融溶接できないことを考慮した溶接構造設計をしなければならない。
(2) クラッド鋼の溶接継手構造は図1のような構造が考えられる。
合せ材部の削除幅(鋼母材部開先上端部から合せ材を削除する幅)は,鋼母材側の溶接熱により合せ材部が変質または融合しないように配慮しなければならない。
また,カットバック深さ(合せ材と鋼母材の接合面より鋼母材側への削除する深さ)は,合せ材の残留がないようにしなければならない。
(3) ライニング構造は,内圧が正圧の場合に採用される。しかしながら運転停止降圧時あるいは液抜き時等に負圧になる場合があるために,許容負圧計算を行っておく必要がある。
また,鋼とチタンの熱膨張率の差およびメタル温度差により,熱応力が発生し溶接部に応力集中しやすく,バッチ運転機器では溶接部の疲労損傷を考慮した構造および溶接設計が必要となる。
チタンのライニング構造は,チタンと鋼との接合が困難なため,特にこの点を考慮しライニング構造を決定すべきである。ライニング材端部の代表的な継手形式は図2のような構造が考えられる。
ライニング材端部を溶接する場合には,ライニング材と鋼母材とが溶融しないように注意しなければならない。
(4) チタンやジルコニウムの溶接は不活性ガスアーク溶接が使用される。
しかしながら酸化防止用に表面および裏面補助ガスシールド治具(アフターおよびバックシールド)が必要なため,被覆アーク溶接に比較して広いスペースが確保できる溶接構造設計をしなければならない。
参考文献
1)日本溶接協会規格:WES 7602-1986,チタンクラッド鋼のイナートガスアーク溶接及びチタンライニング作業標準〈廣瀬 博章〉