- 接合・溶接技術Q&A / Q02-03-23
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Qチタン,ジルコニウムとその合金の溶接の場合,溶接棒(ワイヤを含む)の選定について基準となる規格,母材強度との整合性および表面仕上げ程度などの観点から教えて下さい。
チタンの溶接棒,ワイヤの規格としては,JIS Z 3331-1988(チタン及びチタン合金イナートガスアーク溶接棒及びワイヤ),AWS A 5.16およびASME Code Section Ⅱ Part C SFA-5.16がある。
(1) 純チタンの溶接において,母材強度の整合性と溶接材料の選定についての考え方は,JIS Z 3331の解説にも記されているが,基本的にこれらの母材の溶接には同等の溶接材料を使用すべきである。
その理由は,母材と異なる種類の溶接材料で溶接した場合,引張試験において母材と同等の強度が得られない場合があることによる。
図1にチタン母材における引張強度と含有酸素量の関係1)を示すが,このデータからみても引張強度は主として酸素量により調整され,溶接材料も母材同等材を使用しなければならないことがわかる。
ただし,経年変化した母材の極小さな部分の補修溶接に限定した場合は,純度の高い,伸びのよい溶接材料を選定してもよい。
同様にして,母材がTi-6Al-4V等の場合には,ELI(Extra Low Interstitial)材の溶接材料を用いることがよくあるが,施工法試験を行って母材の引張強度が得られることを確認しておくべきである。
(2) 溶接棒の表面状態については,開先のベベル面の状態と同様,表面は滑らかな方が空気やその他のガスをトラップすることが少なくなり,ブローホールの発生を抑制する効果がある。
また,当然のことながら溶接材料の表面は,アセトンなどにより,十分に脱脂洗浄しておかなければならない。
なお,板厚の薄い母材を切断して,角棒として溶接材料とした場合には,切断時のカエリ等を研磨などで除去しなければ溶接時の棒の送りなどがスムーズに行かず,またカエリにゴミなどの異物が付着して溶接結果に悪影響を及ぼす。
ジルコニウムの溶接棒,ワイヤの規格としてはAWS A5.24およびASME Code Section Ⅱ Part C SFA-5.24がある。
表2にSFA-5.24 Table1に示されるジルコニウム溶接材料の種類と化学成分を示す。
純ジルコニウムに使用される溶接材料は,このうちERZr2である。
ERZr4を使用する場合は,Cb(Nb)添加により溶接割れ感受性が高くなることに十分配慮する必要がある。
参考文献
1)(社)日本チタン協会 技術委員会強度分科会:チタン中の酸素・鉄等の元素濃度と引張強さ・耐力との相関,チタン,Vol.45,No.1,p.45,(平成9年1月)〈葛西 省五〉