接合・溶接技術Q&A / Q02-03-24

Qチタンおよびジルコニウムの溶接において,開先加工を含む前処理における脱脂洗浄など表面状況の手入れについて具体的な注意事項を教えて下さい。また,溶接後の後処理についても教えて下さい。

チタンやジルコニウムは,活性金属と呼ばれており,溶接の前処理である開先加工,タック溶接(仮付け溶接)および本溶接前の洗浄も健全な溶接部を得るためには非常に重要な要素となる。

(1) 開先加工

開先加工は,原則として機械加工で行わなければならない。

図1に種々の方法で裏はつりを行ったときのチタン溶接部放射線透過試験結果の一例1)を示すが,この結果は,同様な方法で開先加工を行った場合についても同様のことが言える。

最も重要なのは,ベベル面やルート面等溶融される部分の面粗度と表面状態である。

特に比重の軽いチタン(4.51)においては,ブローホールが発生しやすく,表面が粗いとそこに空気,ガスなどが吸着し,溶接時においてもそのまま溶着金属中に閉じ込められてブローホールとなる。

また,ルート面の最下部にカエリ等が残っていても,同様の理由でブローホールの原因となる。

もし,開先加工をグラインダで行わなければならない場合には,開先加工後にロータリーバーなどの超硬チップを用いたものでグラインダ面をすべて再研削し,グラインダから入り込んだシリカなどを除去し,滑らかにする。

(2) タック溶接

タック溶接も本溶接同様非常に重要なので,タック溶接を行う溶接士は,本溶接を行う溶接士と同等の技量が必要である。

もちろん,タック溶接前に予めアセトンやメタノールで十分に脱脂,洗浄しなければならない。

タック溶接のシールドが不完全だった場合の硬度上昇がどのようになるかの例を表12)に示した。

このようにタック溶接が重要なのは,不十分なタック溶接が行われていても本溶接が適切に行われてしまえば,外観上では全くわからなくなり,機器の使用前後に,思いがけない割れ事故につながることがある。

チタンクラッド鋼では,使用開始後,数年から長いものでは十数年経ってから問題が発生することもあり,原因がすぐに推定しにくくなる。

また,タック溶接時に使用する溶接ワイヤも先端の酸化部分を確実に切除しなければ同様に悪い結果を生むことになる。

(3) 洗浄

タック溶接が終わってからいよいよ本溶接を行うことになるわけであるが,本溶接前に再度,アセトン,メタノール等で洗浄しなければならない。

なお,このときにトリクロルエチレンなどの有機塩素系洗浄剤を用いると,環境問題や塩素ガスからのブローホールの発生などの観点から使用すべきではない。

(4) 溶接後の処理

溶接後,原則として後処理は行わない。

なぜなら,溶接部は頑強な不動態化皮膜に覆われ,耐食的に非常に良好な表面状態が保たれていること,およびJIS Z 3805-1997(チタン溶接技術検定における試験方法及び判定基準)によれば,溶接後の処理を行ってはならないと規定されているように,溶接表面の着色状態が溶接の善し悪しを決定する重要な因子になっていることによる。

ただし,ユーザの要求などにより溶接部近傍やビードの一部の着色を除去しなければならない場合のみ,硝酸(25~35wt%)+フッ化水素(5wt%)+水(残)などの溶液で洗浄し,十分水洗を行うなどの処理を行うことがある。

参考文献

1)(社)日本溶接協会 特殊材料溶接研究委員会:チタン溶接技術講習会準備資料,(1983)

2)横山博臣:第128回西山記念技術講座,(社)日本鉄鋼協会,p.217,(1989)

〈葛西 省五〉

このQ&Aの分類

チタン・ジルコニウムとその合金の溶接

このQ&Aのキーワード

前処理材質:チタン・ジルコニウム

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