接合・溶接技術Q&A / Q02-03-28

Q炭素鋼に銅合金を肉盛溶接する際の留意点について教えて下さい。

異種金属の肉盛溶接,特に銅との組合せにおいては溶接割れが問題となりやすい。これは鉄と銅の間の相互の固溶限が低く,溶接を行うと溶け込んだ鉄(銅)が析出し,割れを発生しやすいことによる。その点ニッケルは,銅と全率で固溶体となり割れを生じにくいため,異材溶接において銅,銅合金と鋼との間の中間材としてニッケルやモネル(Ni-Cu合金)がしばしば用いられる。また銅合金は融点が低く鋼の溶接に用いると希釈が低く抑えられることから,薄鋼板の接合にも利用されている。これはミグブレージングとよばれ,主にケイ素青銅系ワイヤが用いられている。

異種金属の溶接では,特に溶込みを極力低く抑えると同時に,融合不良の防止に努める必要がある。このため一般にイナートガスアーク溶接が最も適している。

アルミニウム青銅,キュプロニッケルなどの炭素銅への肉盛溶接では,溶接金属が母材熱影響部粒界に侵入する問題がある(図1)。溶接金属中に混入した鉄は凝固とともに析出し,機械的性質,耐食性を劣化させる。このため肉盛溶接では母材希釈をできる限り抑え,耐食性確保のため多層肉盛とすることが必要であり,溶接方法としてはティグまたはミグ溶接が望ましい。

参考文献

1)(社)溶接学会:接合・溶接便覧,丸善(株),p.1074,(1990)

〈渡邊 竹春〉

このQ&Aの分類

銅・銅合金の溶接

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肉盛溶接

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