- 接合・溶接技術Q&A / Q02-03-31
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Q金属間化合物を形成する異種金属間の接合に当たっては,どのような点に注意を払う必要がありますか。
固相接合法にかかわらず,異種金属間の反応は状態図によって大きく,①全率固溶型,②二相分離型,ならびに③中間相(金属間化合物)形成型の3種類に分けられる。これらの中で接合上,とくに大きな問題となるのは,③の中間相の形成である。つまり,接合界面において,
① 遷移層や脆弱な金属間化合物などの中間相の生成(図1)
② 界面をはさむ領域における残留応力・ひずみの発生(図2)
によって割れの発生や継手性能の低下が生じる。つまり,異種金属の接合に溶融溶接法を適用すると,液体状態で大量の異種金属が混合されるために反応の制御が難しいこと,ならびに融点の大きく異なる材料間の接合は困難であることが問題となる。しかし,固相接合法では,基本的に元素間の速度の遅い相互拡散によって接合を行うので接合過程を制御しやすいため,異種金属間の接合に多く用いられる理由となっている。
ところで,同種金属の拡散接合では接合温度が上昇するほど一般に接合強度が向上するが,異材継手の場合には接合温度の上昇とともに接合界面において,中間相の生成が加速される。この中間相の生成のしやすさは,接合材料の組合せに左右される。つまり,金属間化合物を生成しにくい材料の組合せでは継手の性能は優れるが,一方,生成しやすい組合せでは継手性能が低くなる。
一般に,中間相/金属間化合物層の厚さが数mmに達すると継手性能は大きく低下すると言われている。しかし,純Al/純Ti継手では厚さが10μmを超えても性能の低下が少なく,継手性能の低下は材料の組合せによって異なる。さらに,継手の性能は単純に金属間化合物層の厚さだけに起因するものではなく,その内部構造,すなわち複数の析出相がある場合はその析出状態によって破断経路が異なることで強度が変化したり,接合界面周辺の残留応力およびひずみ分布によっても大きな影響を受ける。とくに,金属とセラミックス継手においては,セラミックスの破壊じん性が低いことに起因して,応力・ひずみ分布は,割れの発生を含め大きな影響を及ぼす。また,金属間化合物を生成しにくい材料の組合せにおいても,両材料の元素の拡散速度に大きな差異があると,圧接面に隣接した領域にカーケンダル(Kirkendhal)効果によるボイド(空孔)を発生する問題がある。
●金属間化合物の生成しにくい材料の組合せ:全率固溶する状態図を有する2元素間の接合は容易となる。例えば,Cu-Ni系。
●金属間化合物の生成しやすい材料の組合せ:例えば,Fe-Ti系では非常に脆弱な金属間化合物を生成するので拡散接合法を用いても接合は難しい。
参考文献
1)金,冨士ら:高温学会誌,21巻,5号,p.206,(1995)〈冨士 明良〉