- 接合・溶接技術Q&A / Q02-03-37
-
QSUS304製のコンベアの防食を目的に,機械的に結合した純アルミニウム丸棒を犠牲陽極として使用しています。アルミニウム丸棒の結合部が細くなり脱落するトラブルが発生しております。冶金的に接合する簡便な方法があれば教えて下さい。
本質問では,SUS304が腐食する環境ということで,酸化性雰囲気あるいは塩素イオン濃度の高い雰囲気と考えられる。例えば,海水中の合金の腐食電位列1)を見ると,アルミニウムはSUS304に比べて腐食電位が非常に低く,腐食しやすい金属である。腐食電位の異なる金属を接触(電気的に接続)すれば,電位の低い金属が腐食(犠牲陽極という)され,電位の高い金属が防食されることになる。
簡便な方法として,インサート金属を用い,一種の抵抗溶接で直径8mmのアルミニウム丸棒とSUS304丸棒を接合している事例2)を紹介する。
100メッシュのアトマイズドNi粉末を2本の丸棒間に充填し,通電電流8.4kA/cm2,通電時間を0.3秒として,圧縮荷重を変化させた時の引張強さの変化を図1に示す。図中,○はアルミ母材から破断,□は接合部で破断,●は母材と接合部の境界で破断したことを示す。一連の実験から,8kA/cm2程度の電流,圧縮荷重を9.8MPaとして,通電時間が0.3~0.8秒程度で良好に接合できる。本接合法はインサート材の粉末間の接触抵抗によるジュール熱によって,粉末部を中心に部分的に溶融接合させるものであり,粉末量と電気抵抗の大きいステンレス鋼の長さ(厚さ)により接合条件が変わる。
本質問では,アルミニウムを腐食させ,ステンレスを防食しているわけであるが,異種金属接触腐食においては,面積比効果を考慮することも重要である。すなわち,単独で存在するときよりも,異種金属と接触することにより,カソード面積が両者の表面積の合計となり,アノード電流密度(アノードとしてイオン化し腐食していく金属の単位面積当たりの量に相当)は大きくなる。犠牲陽極を用いる場合,犠牲陽極が腐食消耗することを考慮に入れ,表面積比も検討することが重要である。さらに,前述の腐食電位列から見ると,軟鋼もSUS304より電位が卑の側にあり犠牲陽極として使用できることになる。質問の使用環境が不明であるが,犠牲陽極として軟鋼の使用を検討することも一方法であろう。
参考文献
1)腐食防食協会編:金属の腐食・防食Q&Aコロージョン110番,丸善(株),p.14,(1988)(原典:F.L.LaQue:Marine Corrosion, Causes and Prevention,J.Wiley&Sons,p.197,(1975))2)大城貴昭:金属粉末を用いた接合とその強度に関する研究,平成7年度琉球大学大学院工学研究科機械工学専攻修士論文,p.51,(1995)
〈糸村 昌祐 / 2012年改訂[SI単位]〉