接合・溶接技術Q&A / Q02-03-40

Q炭素鋼に耐食性に優れたステンレス鋼を溶接して欲しいとの要望が増えてきております。アーク溶接での堪所,留意すべき点について教えて下さい。

ステンレス鋼は耐銹性,耐食性,耐酸性などの優れた性質をもっているため,厨房器具からジェットエンジンや原子力関係まで幅広く使用され,その使用量も飛躍的に増加している。最近では,特にプラント関係において連結箇所などにステンレス鋼と他の金属との異種溶接が行われ,一般的にステンレス鋼と炭素鋼の溶接が用いられている。この場合,溶接部はマルテンサイト組織のため硬化したり,脱炭層や浸炭層の影響で割れの発生や脆化のおそれがある1)。写真1はステンレス鋼と低合金鋼の異種金属継手部を熱処理した場合,低合金側の炭素がステンレス鋼溶接金属側に拡散移動し,低合金側には脱炭層がステンレス鋼側には浸炭層が発生した様子を示したものである2)

アーク溶接においては高合金溶接材料を使用するので,母材の溶込み率を調整して適切な化学組成の溶接金属を得るようにしないと,割れの発生や後熱処理により脆化することがある。オーステナイト系ステンレス鋼においては高温割れの発生や溶接後熱処理においてシグマ相が析出して脆化することがある。また,550~800℃の温度範囲に加熱や徐冷されると結晶粒界にクロム炭化物を析出して耐食性が劣化する。溶接後約1050℃より急冷させる固溶化熱処理方法を行うとクロム炭化物がなくなり耐食性はよくなる。さらにマルテンサイト系ステンレス鋼では,溶込み率の違いによって溶接金属部がマルテンサイト組織になり,溶接割れを起こすことがある。溶接割れを防ぐには,予熱および層間温度を200~400℃にし,また,溶接終了後,冷却しないうちに700~750℃に加熱保持したのち,徐冷すればよい3)

このように異種金属の溶接において,溶接材料の選択も重要だが,溶込み率の違いによって溶接部がどのような組成になるかを調べることも必要となる。組成の簡易な予想には,図1に示すようなシェフラーの組織図が用いられる4)。この組織図はまた高温割れ,脆化などの防止に役立つものである。

参考文献

1)屋良秀夫,生田明彦:溶射皮膜をインサート材としたステンレス鋼と炭素鋼の接合,溶接学会論文集,第13巻第4号,pp.540-543,(平成7年11月)

2)(株)神戸製鋼所:ステンレス鋼の溶接

3)渡辺正紀:ステンレス溶接士のための溶接作業教本,ステンレス協会,産報

4)渡辺正紀,向井喜彦:ステンレス鋼の溶接,(株)日刊工業新聞社

〈屋良 秀夫〉

このQ&Aの分類

異種材料の接合・溶接

このQ&Aのキーワード

炭素鋼とステンレス鋼の溶接材質:ステンレス鋼,炭素鋼

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