- 接合・溶接技術Q&A / Q03-01-06
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Q溶接部に対して非破壊検査はいつ適用するのがよいですか。
溶接部に対する非破壊検査は,(1)溶接前,(2)溶接施工中,(3)溶接完了後,および(4)溶接構造物の稼働中に適用されている。
(1) 溶接前の検査においては,開先形状・寸法,開先面の状態,さび・変色・汚れなどの有無,および開先面に割れやラミネーションなどが存在していないかなどを外観試験,磁粉探傷試験または浸透探傷試験を用いて調べる。
(2) 溶接施工中の検査においては,まず初層の検査として,初層の形状や溶込みの状態を調べる。タック溶接部を除去しない時は,この状況も調べる。中間パスの検査として,スラグを除去し,ビード形状,並びに溶接部における割れ,融合不良,溶込み不良,スラグ巻込みまたはブローホールなどの溶接欠陥の有無を調べる。表面に開口した欠陥の検出には磁粉探傷試験または浸透探傷試験が適用される。内部欠陥の検出には放射線透過試験または超音波探傷試験が適用される。また,裏はつりを行った場合にも,裏はつり表面の欠陥の有無を調べるために,外観試験,磁粉探傷試験または浸透探傷試験が適用される。また,収縮および角変形も調べる。
(3) 溶接完了後に行う非破壊検査が最も一般的である。まず,外観試験として,目視およびゲージ,スケールなどを用いて,外観,余盛の形状・寸法・アンダカット,脚長,角変形などを調べる。対象とする溶接欠陥および適用する非破壊試験方法は(2)と同じである。溶接表面状況やスパッタの有無などが非破壊検査結果に大きく影響するため,外観試験をまず行って適切な状態で非破壊検査を行うのが重要である。また,遅れ割れの発生の恐れがある材料の場合には,溶接完了後,最低24時間,場合によっては72時間経過してから非破壊検査を行う必要がある。
(4) 溶接構造物が稼働後に行う非破壊検査は,疲労割れや応力腐食割れなどの検出を目的として行われる。これらの割れは表面付近から発生・伝播する場合が多いため,磁粉探傷試験または浸透探傷試験が適用される。また,表面波を用いた超音波探傷試験が適用されることもある。さらに,製造時の欠陥が見落とされている場合もあり得るため,これらの検出も目的として検査を行う必要がある。
〈加藤 光昭〉