接合・溶接技術Q&A / Q03-03-39

Q渦電流探傷プローブにはどのようなものがありますか。

試験体の形状及び寸法,また検出すべき欠陥の性状に応じて,渦電流探傷試験では以下のような種々の形態のプローブを用いている。

1-1)自己誘導形コイル

 図1(a)に示すように,一つのコイルが渦電流の発生と検出とを兼ねるものを自己誘導形コイルという。コイルの製作は容易であるが,検出すべききずの大きさなどの種類に対応した設計を行うことは困難である。

1-2)相互誘導形コイル

 図1(b)に示すように,渦電流を発生させるコイルと渦電流を検出をするコイルとの2種類のコイルを用いるものを相互誘導形コイルという。コイルの製作は複雑になるが,検出すべききずの大きさに応じて検出コイルの大きさを決めるなど,きず性状に応じた設計の自由度が大きいという利点がある。例えば大きな貫通コイルを励磁コイルとし,小さな上置コイルを検出コイルとするなど,目的に応じて多様なプローブの設計が可能である。

2-1)自己比較方式コイル

 試験体とプローブの距離であるリフトオフが変化すると一般に雑音が発生する。この雑音を小さくするために,図1(c)に示すように,プローブの走査方向にコイルを二つ並べてそれらの信号の差異を検出するものを自己比較方式コイルという。リフトオフの変化で二つのコイルの信号が同時に変化すれば,それらの差をとることによって,リフトオフ雑音を打ち消すことが可能である。プローブ走査で発生するリフトオフ雑音を抑圧するために,探傷に広く用いられている。なお,二つのコイルが並んだ方向に長いきずの検出は困難となるため注意が必要である。

2-2)標準比較方式コイル

 一方のコイルを試験体に,他方のコイルを基準体に作用させて差異を検出するものを標準比較方式コイルという。試験体における減肉量などの絶対量を検出する必要がある場合に用いられるものである。しかし,リフトオフ雑音の影響が大きいため,探傷試験に用いられることは少ない。

3-1)貫通コイル

 図1(d)に示すように,円形コイルの中に試験体を通過させて探傷を行うものを貫通コイルという。線や棒の製造ラインでの全表面の高速度探傷に用いている。なお,自己誘導形自己比較方式のコイルは高速度探傷に適するために用いることが多いが,微小なきずの検出には適さないという問題がある。

3-2)内挿コイル

 図1(e)に示すように,管の中に円形コイルを挿入して走査し探傷を行うものを内挿コイルという。発電所及び化学プラントの熱交換機における配管の保守検査に広く適用されている。なお,自己誘導形自己比較方式のコイルが用いられることが多い。

3-3)上置コイル

 図1(f)に示すように,板状の試験体の表面上を走査しながら探傷を行うものを上置コイルという。棒や管の寸法に比べて小さなコイルを用いることができるため,低速度ではあるが高精度の探傷が可能なプローブとして用いている。ただし,プローブを走査する際には,試験体とプローブとの距離であるリフトオフの変化で大きな雑音が発生するため,SN比を向上させる対策が不可欠である。なお,近年は原理的に雑音が小さい種々のコイルが開発されて実用されている。

〈星川 洋 / 2012年新規〉

このQ&Aの分類

渦電流探傷試験

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プローブ

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