- 接合・溶接技術Q&A / Q03-04-43
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Q超音波探傷試験で溶接欠陥を定量的に評価するには,どのような方法を用いればよいですか。
通常の規格では,欠陥の長さを測定し評価することが一般に義務付けられている。しかし,欠陥の高さの測定方法を規定しているものは少ないようである。欠陥の有害性を破壊力学から評価する場合には,きずの長さより欠陥の高さを測定することが重要であり,正確な計測が望まれている。
超音波探傷試験で欠陥の寸法を正確に測定するときの問題は,通常用いられている平板の圧電素子を用いた探触子では,超音波ビームは材料中を伝搬するにつれて拡散し,太くなっていくことに起因して起こる。言い換えれば,車のヘッドライトのように広がった超音波ビームを用いて,欠陥で反射して戻る音圧を計測していることになる。
この超音波ビームの太さに対して,欠陥の長さは長い場合も多く,この場合には欠陥の長さをある程度測定することが可能になる。反面,欠陥の高さは,一般にこの超音波ビームの太さより短い場合が多く,測定は困難になる。
ただし,欠陥の長さの測定方法も規格によって異なっており,統一されていない。探傷で得られた最も高いエコー高さを基準にして,例えばこれの1/3のエコー高さが得られる範囲を求めて欠陥の長さとする方法および欠陥の最大エコーにはよらずに特定のエコー高さを超える範囲を求める方法などが一般に用いられている。
これらの問題は,超音波ビームの太さに起因していることから,可能な限り細い超音波ビームを用いることで,欠陥の寸法を正確に得ることが考えられる。この目的で,集束探触子が用いられる。集束探触子とは凹面の圧電素子を用いるか,レンズを用いることで,一定の深さ位置で最も超音波ビームが細く,集束させた探触子のことである。
もし,25MHzのような短い波長(0.13mm,横波)の集束探触子を用いることができれば,欠陥の寸法は相当の精度で測定できることが予測される。残念ながら,このような短い波長では,通常の鋼材中で非常に大きな減衰が生じるために用いることができない。
通常用いることのできる超音波は5MHz(波長:0.65mm横波)付近である。この場合,深さ100mmの近傍で超音波ビームを集束させようとすると,約30mm程度の圧電素子を用いる必要があり,かなり探触子が大きくなる。しかし,このような集束探触子を用いることで欠陥の寸法精度を相当改善でき,欠陥の高さも測定可能であるとの報告がなされている。この場合,欠陥の輪郭を得るように,欠陥の端部で生じる微弱な散乱波を受信する程度の探傷感度が必要になる1)。
一方,欠陥の端部で生じる回折波を積極的に判別し,きずの輪郭のみを得る方法が提案されている。端部エコー法(Q3-4-55参照)といわれるこの方法によれば,例えばオーステナイト系ステンレス鋼の溶接熱影響部に発生する応力腐食割れの欠陥高さを,極めて精度良く測定できたとの報告もある2)。
ただし,端部で生じる散乱波は極めて微弱なために,相当高い探傷感度を用いる必要がある。このため,ノイズの発生の多い溶接部および微小なブローホールなどの欠陥が周辺に多い溶接部では,どのエコーが欠陥の端部のエコーであるかの判別が困難になり,大きく欠陥の寸法を見誤る例の報告もなされている3)。
イギリスで開発された超音波TOFD法(Q3-4-58参照)は,最も欠陥の高さの測定精度に優れた手法として期待されている。図1に示したこの手法は,欠陥を挟んで二つの斜角探触子を対向して一定距離で配置し,溶接線に沿って探触子を走査する方法である。原理は端部エコー法に似ており,欠陥の端部で生じる散乱波を受信し,このときのビーム路程と探触子位置を画像化する方法である。丁度,溶接線の長手方向の断面に対応した画像が得られ,画像から欠陥の寸法を正確に得ることができる。この方法によれば10%以内の測定誤差で,例えば進展する疲労割れの欠陥の高さを監視できたとの報告がなされている4)。

参考文献
1)T.Arakawa,N.Ooka:Dimensional measurement accuracies obtained by focused ultrasonic beam on flaws in heavy section steel plate weldments, ASME PVP,Vol.313―1,pp.315―321,(1995)2)H.Yoneyama,S.Shibata,M.Kishigami:Crack Depth
Measurement by Flaw Tip Echo Method,The 2nd Japanese-German Joint Seminor on Nondestructive Evaluation and Structural Strength of Nuclear Power Plants,(Tokyo),p.70,1983
3)T.Arakawa:Japanese evaluation of the Japanese results, PISC II Symposium OECD:PISC II,PISC II Final Report pp.417-427,(1986)
4)芝田,米山,荒川,笹原:超音波TOFD法の適用拡大,石川島播磨技報,第38巻,第2号,pp.119-123,(1998)
〈荒川 敬弘 / 2012年改訂[一部修正・字句修正]〉