接合・溶接技術Q&A / Q04-01-02

Q低温割れとはどのような割れですか。どのような機構で発生するのですか。

低温割れは200~300℃より下の温度域で発生する溶接割れである。突合せ溶接部における低温割れの代表的な例を図1に示す。HAZ(溶接熱影響部)の割れはルート部や止端部に生じるが,溶接金属の低温割れはルートやビードの谷間の縦割れのほかビード直角方向の横割れもある。SEM(走査型電子顕微鏡)観察を行うと,擬へき開パターンや粒界割れの典型的な水素ぜい化破面がみられる。

図2に低温割れの発生機構を示す。溶接部の収縮ひずみ(応力)のみでも割れが生じることもあるが,溶接熱で大気中や溶接材料中の水分が溶解して鋼中に侵入し,拡散・集積する水素の作用によることが多い。鋼中に水素が侵入すると,鋼の延性・限界応力が低下する水素ぜい化が生じるためである。止端やビード谷間は急熱・急冷により硬化組織となりやすく,水素ぜい化感受性は増加する。

また,溶接直後には割れが生じていなくても,時間が経過して水素が拡散・集積して限界量に達すると割れが発生するため,「溶接遅れ割れ」と呼ばれることもある。さらに,水素は長時間にわたり拡散・集積を続け,その間は割れは伝播を続ける。溶接部のひずみ・応力が小さいと割れ発生限界水素量は多く,割れが生じるには長時間を要する。強度が高く,硬化組織ほど水素ぜい化感受性が高く,低いひずみ・応力レベルまたは少ない水素量でも低温割れが生じやすくなる。

〈中西 保正〉

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