- 接合・溶接技術Q&A / Q04-01-12
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Q高温割れとはどのような割れですか。
溶接割れの分類の1つに割れの発生時期(温度)がある。高温割れは溶接中および冷却中の高温度域で発生する割れと定義され,低温割れ,再熱割れなどと区別される。図1に高温割れの例を示す1)など。発生位置は溶接金属の最終凝固域が多いが,ステンレス鋼などでは熱影響部(HAZ)に発生することもある。さらに,多層溶接では,次パスによる熱を受けた部分に高温割れが生じることもある。
図2および図3に高温割れの分類および凝固過程における金属材料の高温延性(模式図)を示す。溶接金属が凝固を開始すると,凝固中に極めて延性の低い凝固ぜい性温度領域にまずぶつかる。この温度域では固相と液相が混在し,低融点元素が液相中に偏析して割れの原因となる。これを偏析割れと呼び,溶接金属の凝固割れ,HAZの液化割れおよび多層溶接により再加熱された溶接金属の液化割れが含まれる。図4に凝固割れの模式図を示す。一般に高温割れといえば,凝固割れを意味することが多い。凝固割れは,柱状晶の境界面に残留する液相が凝固完了直前に収縮ひずみに抵抗しきれずに開口するために発生する。割れ発生には液相の融点や量および固相とのぬれ性などが影響を及ぼす。
さらにやや低い温度では,凝固時に形成された変化に富むデンドライド状の粒界が直線状になろうとし,再び延性の低下が生じて割れが発生しやすくなる。これは延性低下割れと呼ばれ,溶接金属,HAZおよび多層溶接時の再加熱部にみられる。延性低下割れは再結晶後の新しい粒界に沿って発生する。破面には液化の跡がなく,すべり帯やサーマルエッチ面が観察されることが多いのが特徴である。また,液化割れはHAZ粗粒域の高温に加熱された粒界が低融点化合物や共晶の生成,成分偏析などで局部的に溶融し,収縮時に開口して発生したものである。
参考文献
1)(社)溶接学会 溶接冶金研究委員会編:鉄鋼溶接部の破面写真集,黒木出版社,(1982)など2)松田:溶接継手の高温割れと防止対策,金属材料,Vol.17,No.7
3)本間:溶接割れとその防止,溶接学会誌,Vol.57,No.7,(1988)
〈中西 保正〉