- 接合・溶接技術Q&A / Q04-01-32
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Qマグ,ティグ溶接での気孔の発生しやすい箇所について教えて下さい。
気孔とは,溶接継手においてガス(H2,N2,CO,Ar等)の影響によって発生する欠陥の総称である。発生のメカニズムは,大気,シールドガス,あるいは溶接中に発生したガスが溶融金属中に侵入して気泡となり,それが放出されないまま凝固してしまうものである。溶接部に発生する気孔としては,ピット,ブローホール,ガス溝の3つの種類がある。このうちビード表面に開口した欠陥をピット,ビード表面の長手方向に延びて凹みがある欠陥をガス溝,溶接金属内に残留した球状の欠陥をブローホールと呼んでいる(図1)。これら気孔は,①シールド性,②母材の表面状態,③溶接施工,④溶接機器,等の状態が不適当な場合に発生する。それぞれの原因を誘発する因子は表1に示すとおりであるが,実際には,それぞれの要因が重なり合って気孔を発生させる場合が多い。したがって,気孔が発生しやすい箇所とは,表1の原因を誘発しやすい箇所といえる。部位としては,シールド不良が鋼構造物の構造上生じやすい箇所(例えば,鉄骨のボックス柱の初層溶接で裏当て金とトッププレートの隙間からガスが入りやすい箇所等,図2)や溶接中にガスが多量に生じやすい,黒皮,錆,油,水分,プライマー等が存在する鋼板の溶接箇所(すみ肉溶接のルート部など,図1)が代表例である。なお,現地施工等で溶接中に横風等を受けシールド性が著しく悪い場合には,集中的な蜂の巣状のブローホールが発生する場合がある。



参考文献
1)及川:溶接110番,溶接だより/技術がいど,(株)神戸製鋼所,No.343,p.13,(1998)2)(社)日本溶接協会 溶接棒部会:マグ・ミグ溶接の欠陥と防止対策,産報出版(株),p.185,(1991)
〈細井 宏一〉