接合・溶接技術Q&A / Q04-01-42

Q溶接部の品質保証は,非常にむずかしい問題だといわれていますが,それは何故ですか。またそれを克服するためにどんな対策がありますか。

品質保証とは,ISO 9000による定義を判りやすく説明すると「生産者が行う品質マネージメント活動の一部で,その目的は顧客(買い手,消費者)が品質に対して満足し,疑いない確信をいだくようにするためのもの」である。しかしながら,溶接部の品質保証を行なう場合,溶接欠陥などは非破壊試験により検出できるかもしれないが,継手の強度や延性,じん性など破壊試験を行わなければわからないため,製品の溶接部では事実上調べる方法がない。

そのため,ISO 9000の初版(1987年版)では,溶接は熱処理とともに代表的な「特殊工程」と明確に定義されていた。「特殊工程」というのは,結果が後工程で実施される検査および試験によって,要求された品質基準が満たされているかどうかを十分に検証することができない工程と定義されている。「特殊工程」における品質保証を確かなものにするために,ISO 9001:2000 / JIS Q 9001:2001「品質マネジメントシステム-要求事項」では,プロセスの妥当性確認を要求している。すなわち,「特殊工程」に当たるプロセスに対しては,要求事項も含めて顧客の意図した用途に実際の使用条件下で製品が適合しているか,客観的証拠によって確認することが要求されている。

具体的には,次の事項のうち,適用できるものを含んだ手続きを確立することが要求される。

① プロセスのレビューおよび承認のための明確な基準

② 設備の承認および要因の適格性確認

③ 所定の方法および手順の適用

④ 記録に関する要求事項

⑤ 妥当性の再確認

溶接の場合,その対処策として,この要求に対応させたISO 3834「溶接の品質要求事項」 が作成された。これはISO 9001の溶接版ともいうべき規格で,より詳細な品質確保のための手順,事業所が実施すべき活動項目を規定している。ISO 3834:1994年版のPart 1およびPart 2はJIS化されJIS Z 3400:1999「溶接の品質要求事項-金属材料に融接」がその翻訳版規格として発行されている。

「特殊工程」に対しては,特にプロセスの明確化と承認の手順,および溶接に従事する要員認証が要求されているため,溶接施工要領書( WPS: Welding procedure specification)の作成と承認を規定した規格( ISO15607~15614 / JIS Z 3420~3422),並びに要員認証に関する規格として,溶接管理技術者の任務と責任を規定した(ISO 14731 / JIS Z 3410:溶接管理-任務及び責任),およびISO 9606(溶接技能者の承認試験)が作成された。溶接品質を保証するには,ISO 3834 / JIS Z 3400に規定された溶接の品質要求事項に対し,要求される品質水準に応じて,有資格者により確実に実施することが求められている 1),2)

なお2005年にISO 3834が改定されたため,現行のJIS Z 3400もISO 3834:2005に対応させて改定作業が実施されている。さらに2006年にISO 14731も改定されたので,同じくJIS Z 3410もこれに対応させて改訂作業が行われている。

参考文献

1)新版溶接・接合技術入門(溶接学会編)第3版,第4章 4.1 溶接構造物の品質保証,産報出版

2)新版溶接・接合技術特論(溶接学会編)第4版,第4章 4.1 溶接の品質マネジメントシステム,産報出版

〈片山 典彦 / 2012年改訂[全面改訂]〉

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品質保証

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