接合・溶接技術Q&A / Q05-01-08

Q溶接金属を含めた溶融金属の凝固現象の定量的な取扱いやシミュレーション予測の現状はどのようになっていますか。

凝固ミクロ組織については,デンドライトの横断面を分割し,要素間の溶質の拡散を差分法で解き,各要素内の熱力学平衡計算によって固液界面の位置,固相変態界面の位置を求める方法で,ミクロ偏析,相比率が解析されるようになっている(図1)。熱力学平衡計算にはThermo.Calc. 等の計算熱力学ソフトを使うことができる。ただし,この解法ではデンドライトの形状を前提にしている。形状の予測については,フェイズフィールドモデルを用いて,溶質,熱の拡散場,固液界面でのキャピラリー効果を考慮に入れた平衡条件により,シュミレーションされるようになってきた(図2)。

一方,凝固マクロ組織については,凝固の自由エネルギー変化,固液界面,粒界の形成によるエネルギー変化に基づき,凝固核の形成,成長をモンテカルロ法を用いて確率論的に計算し,一方でこれら凝固の進展による潜熱や溶質の放出を考慮に入れた上で,溶質の拡散と伝熱を直接差分法で計算して温度場,濃度分布を求める組合せで,シュミレーションがなされている(図3)。また,急速凝固の際に,可能性のある全ての結晶の核形成速度を古典論核形成理論を用いて計算し,安定相,準安定相,非晶質のいずれが現出するかを,予測した例もある(図4)。凝固相の選択に関して,核形成,成長等の凝固理論についての進展も目覚ましく,上記のシミュレーション計算の要素ロジックにも新しい理論が適用されてくると思われる。

参考文献

1)小林亮:結晶成長の数理モデル,日本結晶学会誌,日本結晶学会,第18巻2号,p.209,(1991)

2)野上敦嗣,松宮徹:凝固現象のモデルと計算機シミュレーション,溶接学会誌,(社)溶接学会,66巻7号,p.6,(1997)

3)A.P.Miodownik:第14回日本合金状態図共同研究会資料

〈松宮  徹〉

このQ&Aの分類

凝固

このQ&Aのキーワード

凝固現象

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