- 接合・溶接技術Q&A / Q05-01-26
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Qなぜ溶接熱影響部の破壊靱性が注目されるのですか。同じ大きさの欠陥があっても破壊につながるものとそうでないものがあるのはどうしてでしょうか。破壊が生じるかどうかを判定する方法とその支配因子などについて教えて下さい。
溶接によって構造物の脆性破壊を促進するような要因の生じることは避け難い。これをいかに制御するかが溶接構造の設計・製作にとって重要となる。
溶接部の持つ特徴と脆性破壊をもたらす3要因との関係を示したものが図1である。溶接部に生じる材質変化,特に材質劣化が生じると,溶接欠陥などの応力集中源の存在と相まって,脆性破壊の発生につながる。
溶接熱サイクルによって,溶接金属近傍の母材(溶接熱影響部,溶接HAZ)は複雑な組織分布になる。溶接熱影響部の中で融合線ごく近傍の粗粒域(CGHAZと呼ばれる)は一般に硬化し,その破壊靱性が低くなることは古くから指摘されてきた。特に,高張力鋼では溶接熱影響部の組織は,溶接によって受ける熱履歴によって複雑に変化するが,図2に示すように熱影響部粗粒域,特に多重熱履歴を受けるとき後続熱サイクルでオーステナイトとフェライトの二相域に加熱されるICCGHAZ領域が低靱性となる。実際の溶接熱影響部破壊靱性試験での結果でも,ICCGHAZから劈開亀裂が発生しやすい。1980年代の北海のODINフィールドにおける海洋構造物の破壊事例は,溶接熱影響部(HAZ)破壊靱性要求の1つの転機を与えた。溶接HAZの靱性に関する詳細な調査から,溶接部破壊靱性が大きなばらつきをもち,極めて低い靱性を呈するのは,鋼溶接部に存在する局部的な脆化部が大きな役割を果たしていることが指摘された。特に,近年の鋼材の溶接熱影響部に見られるミリメータオーダの局部的脆化部は,英国でLocal Brittle Zone(LBZ)と呼ばれて以来,LBZ問題として多くの注目を集め,溶接部のLBZ靱性を評価しなければならないという認識を広め,熱影響部靱性が改めて注目されるに至っている。
このような低靱性部が存在すると脆性破壊の危険性が増すわけであるが,低靱性の存在が必ず脆性破壊につながるわけでもない。脆性破壊の必要要件は,引張り応力の存在と,亀裂のような鋭い応力集中源の存在が低靱性の存在と重畳して生じる。例えば,脆性破壊が材料の降伏点以下で生じるような場合,線形破壊力学によると,寸法が2cの亀裂を持つ十分大きな板の破壊強度scは,破壊靱性をKcとするとき,
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で評価でき,亀裂寸法が小さくなると破壊応力が大きくなり破壊しにくくなる。このように同じ破壊靱性であっても,そこに存在する欠陥などの亀裂寸法に依存し,その寸法が小さいと,脆性破壊以前に他の崩壊,延性破壊や座屈などが生じることになり,低靱性であることを必ずしも脆性破壊にはつながらない。しかし,靱性が低いことは,施工での不具合に対して許容限が小さいことを意味し,著しい破壊靱性の低下をもたらさないように施工上の注意が必要である。


参考文献
1)豊田政男:第163,164回西山記念技術講座「地震と鋼材」,(社)日本鉄鋼協会,p.19,(1996)2)Haze,T.,Aihara,S.:Proc. of 7th Int. Conf. on OMAE Vol.III,p.515,(1988)などより作成
〈豊田 政男〉