- 接合・溶接技術Q&A / Q05-02-26
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Q鋳鉄の溶接が困難で,難しいといわれる主な点は何ですか。
鋳鉄は図1の状態図に示すように,Fe-C系平衡状態図ではC2.0~6.7%のFe-C合金である。成分的には炭素鋼に比べ含有炭素量が著しく多いことが特徴である。鋳鉄の溶接は,以下に述べる理由で困難で難しいと言われている。
(1) 鋳鉄は図2に示すように溶融状態から急冷すると白銑化しやすくなる。白銑化すると熱膨張係数がねずみ鋳鉄に比べて著しく異なるため,溶接部と母材部の収縮に差ができ,大きな残留応力が発生し,さらに白銑は硬くもろいために割れが発生しやすくなる。
(2) 鋳鉄は多量のCを含んでおり,それが溶接中,酸素により酸化されCOガスとなり,溶接金属にブローホールやピットの原因となる。
(3) 鋳鉄そのものが,延性が少なく,かつもろい,さらに鋳造時の残留応力と溶接による残留応力とあいまって,肉厚の変化した部分や角などに集中して割れが発生しやすくなる。
(4) 溶接金属中に母材のC,SiおよびS,Pなどの有害な元素が溶け込み,溶接金属の硬度を高め,延性・靱性を阻害し割れが発生しやすくなる。
(5) 長時間高温に加熱された鋳鉄は,写真1に示すようにその黒鉛が粗大化し,黒鉛と基地に間隙が生じ,その付近に油や水がしみこんだりして,溶接時,なじみを害したり割れ,ブローホールなどの原因となる。
(6) 鋳鉄そのものに巣穴,ブローホール,砂かみなどの欠陥があると,溶着不良の原因となりやすい。
以上のような理由で鋳鉄の溶接は困難であり,溶接法・溶接棒および溶接施工法などに工夫が必要となるのである。
参考文献
1)溶接ハンドブック〈三原 孝夫〉