接合・溶接技術Q&A / Q05-02-105

Qセラミックスの接合にろう付法を適用した場合,どのようなことに注意すればよいでしょうか。特に,金属との接合において考慮すべき点は何でしょうか。

数多くの界面接合技術の中でろう付法は,セラミックスの接合に最も広く用いられている方法であり,簡便で良好な接合が行えるため,各方面で注目を集めている1-3)。セラミックス同士あるいはセラミックスと金属をろう付する場合でも,基本的には金属のろう付において配慮すべき要件は満足する必要があるが,これらの施策だけでは,必ずしも十分な接合が行えるわけではなく,支障を来す場合が多いことが経験的に知られている。表1はセラミックスのろう付において特に留意すべき項目およびこれらに対する一般的な対処法をまとめたものである。

セラミックスの接合には,ろう材の選定が非常に重要である。金属ろう付に使用されるろう材そのままでは,セラミックスに対するぬれ性や反応性が乏しく,接合が達成されないことが多い。このため,セラミックスとのぬれ性や反応性を確保する目的で,セラミックスに対して活性な元素をろう材に添加することが有効である。また,セラミックスとの反応を適正に生じさせる観点から,ろう材の融点(すなわち,接合温度)の設定も必要である。このような背景から,従来のNi,Au,Ag,Cuろうなどに対して活性な金属(TiやZrなど)を添加した合金系のろう材が開発されている(活性金属法4,5)/弱活性金属法6))。その中でも,セラミックスの接合によく用いられるのが,Ti入り銀ろう(BAg-8+Ti)である7,8)。一般に,このろう材は,酸化物系および非酸化物系セラミックスを問わず良好な接合が可能である。一方,セラミックスをメタライズすることにより,これまでの金属用ろう材を用いて接合することも可能である9-11)

セラミックスをろう付する場合,接合プロセスパラメータの制御が必須となる。セラミックスとろう材の反応により脆性生成相が形成されたり,反応不足や反応過剰が生じた場合には,接合継手特性は非常に低下することが知られている。また,ろう材の充填不足やろう切れなどに起因した接合欠陥(ボイドなど)の発生も防止しなければならない。これらはいずれも,ろう材やメタライズの選定のみならず,プロセスパラメータに大きく依存していることから,プロセスパラメータを最適化し,界面反応制御(相と量)や接合欠陥制御を行うことが高性能接合に向けての重要な項目となる12,13)

セラミックスと金属の間の材料学的な結合が達成された場合においても,接合操作の冷却過程で発生する熱応力の最小化は,接合継手特性の観点からきわめて重要な意味を持つ。特に,セラミックスと金属のろう付では,両者の熱膨張係数が異なる(一般に,金属の方が大きい)ことから,熱応力の発生は避けがたく,セラミックス中に割れがしばしば発生する。たとえ,割れの発生が阻止できたとしても,残留応力は接合継手特性に悪影響を及ぼすことが危惧される。これらのことから,セラミックスの接合における熱応力の低減は見過ごせない課題であり,金属とのろう付の場合には,このことが接合の支配的要因になる場合も多く認められる。熱応力の最小化に向けては,表214)に示すような熱応力緩和策の積極的導入や接合継手設計へのフィードバックが現実的な対処法となっている。この中でも,中間層や緩衝層を挿入する方法は有効であり,低弾性率金属(ソフトメタル)を中間層とし,塑性変形による熱応力緩和,あるいは,セラミックスと金属の中間的熱膨張率を有する金属(高融点金属など)を用いる熱応力緩和が最もよく行われている。

参考文献

1)奈賀ら:溶接技術,Vol.37,No.4,p.82,(1989)

2)中橋ら:日本複合材料学会誌,Vol.12,No.5,p.223,(1986)

3)C.R.Weymuller:Welding Design&Fabrication, Vol.60,No.8,p.45,(1987)

4)H.Mizuhara et.al.:Welding J.,Vol.64,No.10,p.27,(1985)

5)M.G.Nicholas:Br.Ceram.Trans.J.,85,p.144,(1986)

6)中尾ら:溶接学会論文集,Vol.7,No.1,p.136,(1989)

7)志智ら:日本セラミックス協会学術論文集,Vol.96,No.9,p.930,(1988)

8)深谷ら:溶接学会論文集,Vol.8,No.4,p.62,(1990)

9)岡村ら:溶接学会論文集,Vol.6,No.2,p.226,(1988)

10)江畑ら:窯業協会誌,Vol.92,No.5,p.294,(1984)

11)才田ら:溶接学会論文集,Vol.15,No.2,p.330,(1997)

12)W.H.Sutton:G.E.Technical Information, R66SD4(1966)

13)中尾ら:溶接学会論文集,Vol.11,No.1,p.142,(1993)

14)中橋ら:表面,Vol.24,No.10,p.595,(1985)

〈才田 一幸〉

このQ&Aの分類

セラミックス

このQ&Aのキーワード

ろう付法の注意材質:セラミックス施工法:界面接合法(拡散接合,ろう付,はんだ付)

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