接合・溶接技術Q&A / Q06-02-01

Q鋳鉄はなぜ割れやすいのですか。

鋳鉄はそれ自体が延性に乏しく,脆い上に溶接熱により母材融合部や熱影響部に硬くて脆い組織ができるためである。

鋳鉄(普通鋳鉄,ネズミ鋳鉄ともいう)は写真1に示すように,片状の遊離黒鉛とフェライト+パーライトからなる組織を示す。しかし,この様な組織になるのは溶融状態から徐冷された場合であって,急冷されると組織は写真2に示すように,炭素は黒鉛として遊離晶出せず,炭化物であるセメンタイト(Fe3C)となり,凝固の際にオーステナイト(降温とともにパーライト化する)とセメンタイトとの共晶組織,すなわち白銑と呼ばれる硬くて脆い組織となる。

白銑組織は普通鋳鉄と熱膨張係数が著しく異なるため,収縮時に大きな残留応力が生じて割れやすくなる。膨張係数は,普通鋳鉄が12×10-6に対して,白銑は16×10-6である。図1は鋳鉄の冷却時の収縮量を示したものであるが,溶融状態からの白銑の収縮量は鋳鉄のおよそ3倍である。このように白銑組織の生成は鋳鉄の溶接を困難にしている。

参考文献

1)溶接シリーズ編集委員会監修:現代溶接技術大系第25巻,産報出版(株),p.101,(昭和55年1月)

2)(社)溶接学会編:溶接便覧,丸善(株),(昭和47年4月)

3)(社)日本鉄鋼協会編:鉄鋼便覧,丸善(株),(昭和46年3月)

4)溶接シリーズ編集委員会監修:現代溶接技術大系,産報出版(株),(昭和55年1月)

5)佐藤知雄編:鉄鋼の顕微鏡写真と解説,丸善(株),(昭和38年7月)

6)(社)日本熱処理技術協会:鋳物と非鉄金属材料の熱処理,(株)日刊工業新聞社,(昭和45年6月)

〈伊葉  正〉

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鋳鉄

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