- 接合・溶接技術Q&A / Q06-02-02
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Q鋳鉄の溶接で,ピーニングという言葉を聞きますが,ピーニングとは何ですか。また,その効果について教えて下さい。
ピーニングとは,溶接金属をハンマーなどで打ち延ばすことを言い,溶接金属に塑性変形を起こさせて,溶接による収縮歪を軽減し,溶接残留応力の緩和,ならびに溶接変形および溶接部に生じる割れを防止する効果がある。
一般に,1パス程度で割れることはほとんどないが,パス数が増して熱応力が大きくなると割れやすくなるため,パス毎のピーニングが不可欠である。割れが発生するのは溶接後10秒ぐらいの時間であるとの研究報告(石井:溶接協会)1)があり,ピーニングは溶接直後に,速やかにスラグを取り除き,ビードがまだ温かい内に行う必要がある。
ピーニングを迅速に行うために,スラグを除去せずにスラグの上からのピーニングもしばしば行われるが,この場合には次層パスのブローホールを増加させることがある。しかし,スラグ除去のためにピーニング時期が遅れることは更に良くないため,場合によっては2人で組むなど工夫が必要である。
ピーニングの方法は,500~900g(1~2ポンド)の片手ハンマーで叩いて,ビードの波形が消える程度が適度なピーニング量である。ハンマーは,ビード位置や開先形状に合わせて先端に丸みをもたせたものを数種類用意して置くと便利である。
ピーニングは単に応力を緩和させるだけでなく,ブローホールなどの溶接欠陥を潰滅させて強度を上げ,熱影響部の硬さも軽減されることが観察されている。
エアーハンマーを使用することがあるが,強さの手加減ができないため,エアーハンマーの器具,大きさによって衝撃力が異なるので適当なものを選択すべきである。
参考文献
1)溶接シリーズ編集委員会監修:現代溶接技術大系第25巻,産報出版(株),p.155,(昭和55年1月)2)(社)溶接学会編:溶接便覧,丸善(株),(昭和47年4月)
3)(社)日本鉄鋼協会編:鉄鋼便覧,丸善(株),(昭和46年3月)
4)溶接シリーズ編集委員会監修:現代溶接技術大系,産報出版(株),(昭和55年1月)
5)佐藤知雄編:鉄鋼の顕微鏡写真と解説,丸善(株),(昭和38年7月)
6)(社)日本熱処理技術協会:鋳物と非鉄金属材料の熱処理,(株)日刊工業新聞社,(昭和45年6月)
〈伊葉 正〉