接合・溶接技術Q&A / Q06-02-03

Q鋳鉄の溶接で,2番部が硬くなるのはなぜですか。

俗に溶接の2番部と言われるのは,溶接熱により母材部に生ずる熱影響部(HAZ)の事を言い,溶接熱によって急熱急冷されて母材の組織が変化した部分である。

予熱温度や溶接後の冷却状態によって異なるが,溶接金属と母材との境界から母材部にかけての熱影響部(2番部)の組織は,一般的に図1に示すごとく,母材との融合部およびその近傍では白銑化が起こり,ここから遠ざかるに従って,マルテンサイト,焼戻しマルテンサイトまたはソルバイト,パーライト,そして母材鋳鉄原質部へと続く組織を示す。

図1中の数字は,各々の組織のおよその硬さを表したもので,硬さが最も高くなるのは溶接金属に接する白銑化部分と,それに隣接するマルテンサイト組織の部分である。

これら硬度の高い白銑やマルテンサイト組織は,鋳鉄母材の溶融温度から500℃迄の間を急冷される場合に生成する。鋳鉄の溶接にはガス溶接法,熱間溶接法,冷間溶接法が用いられており,ガス溶接法および熱間溶接法は500~600℃の予熱を行い,溶接中もその温度を保ち溶接後は徐冷するので,白銑やマルテンサイト組織は生成せず熱影響部は硬化しない。

一方,よく利用されている冷間溶接法では予熱無し,もしくは予熱をしても200℃程度の予熱にて施工するため,溶接部は急冷され,熱影響部(2番部)には前記2組織(白銑,マルテンサイト)が生成し著しく硬化する。

参考文献

1)(社)溶接学会編:溶接便覧,丸善(株),(昭和47年4月)

2)(社)日本鉄鋼協会編:鉄鋼便覧,丸善(株),(昭和46年3月)

3)溶接シリーズ編集委員会監修:現代溶接技術大系,産報出版(株),(昭和55年1月)

4)佐藤知雄編:鉄鋼の顕微鏡写真と解説,丸善(株),(昭和38年7月)

5)(社)日本熱処理技術協会:鋳物と非鉄金属材料の熱処理,(株)日刊工業新聞社,(昭和45年6月)

〈伊葉  正〉

このQ&Aの分類

鋳鉄

このQ&Aのキーワード

熱影響

Q&Aカテゴリ一一覧