- 接合・溶接技術Q&A / Q06-02-08
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Q鋳鋼の溶接で注意すべき点は何ですか。
鋳鋼は圧延鋼と同様の化学成分であっても,溶接に際しては,溶接性が劣ると考えて取り掛かることが望ましい。すなわち,巣その他の鋳造欠陥の存在,複雑な形状や部分部分の厚さの違いおよび鋳造残留応力などが溶接時の割れ発生の要因となることが多い。特に,炭素含有量の高い鋳鋼の場合,溶接熱による急熱急冷が熱影響部を硬化(マルテンサイト生成)させ,割れが発生しやすくなる。
このような割れ発生を防止するには,変形および収縮応力を軽減し,切欠き部への応力集中を軽減すること。水素による割れと関係が大きい熱影響部の硬化を防止することが重要である。これらの影響を軽減する最も効果的な方法は予熱である。圧延鋼と同一成分の鋳鋼の場合,一般的には圧延鋼に比べて30~50℃高目の予熱温度を選択する事が望ましい。
溶接材料の選択に当たっては,大物鋳鋼品や炭素含有量が高い鋳鋼においては同一成分の溶接材料を使用することが原則である。加えて低水素系溶接棒を使用すべきである。場合によっては適当な溶接材料がない場合があるが,このような時には引張り強さおよび耐力が似通ったものを選択するとよい。表1に鋳鋼における溶接補修基準を参考に示しておく。
参考文献
1)溶接シリーズ編集委員会監修:現代溶接技術大系第25巻,産報出版(株),p.54,(昭和55年1月)2)(社)溶接学会編:溶接便覧,丸善(株),(昭和47年4月)
3)(社)日本鉄鋼協会編:鉄鋼便覧,丸善(株),(昭和46年3月)
4)溶接シリーズ編集委員会監修:現代溶接技術大系,産報出版(株),(昭和55年1月)
5)佐藤知雄編:鉄鋼の顕微鏡写真と解説,丸善(株),(昭和38年7月)
6)(社)日本熱処理技術協会:鋳物と非鉄金属材料の熱処理,(株)日刊工業新聞社,(昭和45年6月)
〈伊葉 正 / 2012年改訂[規格・SI単位]〉