- 接合・溶接技術Q&A / Q06-08-09
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Q純金属(Mo,Nb等)を溶接したいのですが,どのような溶接方法を採用したらよいのか教えて下さい。
Mo,W等のⅥa族の金属は本来的に粒界脆性という重大な問題を抱えており,特にポロシティ,溶接割れの発生および結晶粒粗大化を抑制することが要求される。このため,溶接方法だけでなく用いる素材にも配慮する必要がある。まず初めに,ポロシティの発生については,一般に素材の製造方法,純度などの影響を大きく受ける。粉末冶金材は溶解材に比べてポロシティが発生しやすいが,Moの場合,酸素量を約15ppm以下に低減すればほとんど発生しない。溶接方法として,真空中で行われる電子ビーム溶接は空気混入の恐れがない反面,一定圧力下で行われるティグ溶接に比べてポロシティを発生しやすい。このため特に酸素含有量を低減した素材の使用が要求される。一方,Wの場合,Moに比べて純度が高くまた酸化物の蒸気圧がMo酸化物に比べて低いため,ポロシティが発生しにくい。
続いて溶接割れについては,ポロシティと同様に,酸素,窒素量を低減した素材を用いることが肝要である。溶接割れの発生機構は,結晶粒界に形成された低融点共晶反応物が溶接時に生じた残留応力によって高温粒界脆化を引き起こしたためである。したがって,溶接方法としては小さな溶接入力で行われる電子ビーム溶接がより望ましい。一方,Wの場合,Moに比べて溶接割れが発生しにくとされている。
なお,ポロシティあるいは溶接割れの発生はいわゆる溶融溶接において起こる問題であり,拡散接合,ろう付等の固相接合においてはほとんど問題にならない。例えばチタン合金,Ru-Mo合金などを用いて真空中あるいは不活性ガス中でろう付を行えば,健全な継手を得ることができる。最後に,結晶粒粗大化は適用する溶接方法に関係なく,不可避の問題である。一般に溶接入力が小さい電子ビーム溶接を適用すれば,溶接金属および熱影響部における結晶粒粗大化を軽減でき,他の溶接方法に比べて高い継手強度を得ることができる。さらに図1に示すように,溶接前後の浸炭処理により適量の炭素添加を行えば,継手強度(高い破断強度)および延性(低い延性―脆性遷移温度)を格段に改善することができる。
Nb,Ta等のⅤa族の金属は,Mo,Wと異なり顕著な粒界脆性を示さないため,通常格段に良好な溶接性を示す。ただし,これらの金属は高温においてきわめて活性であるため,Mo,Wに比べて酸素,窒素,炭素等の固溶限が大きく,それにより素材が顕著に脆化する点に配慮する必要がある。したがって,溶接方法として真空中で行う電子ビーム溶接が最善である。また,シールドに十分注意すればティグ溶接も適用可能である。さらにろう付の場合,特に高温ろう付の場合には雰囲気として高真空が要求される。代表的なろう材としてチタン合金,ジルコニウム合金(Nbの場合)およびハフニウム合金,チタン合金(Taの場合)が使用される。

〈平岡 裕〉