- 接合・溶接技術Q&A / Q07-09-01
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Q溶接ロボットのティーチング作業を減らすにはどうしたらよいでしょうか。
ティーチング作業を減らすには,ロボットの機能を利用する方法とオフラインティーチングを利用する方法がある。
まず,ロボットの機能を使う場合について述べる。かつてティーチングしたワークと共通性がある場合には,コピーをして修正する。同じ部材が沢山並んでいる場合には,コピーしてシフトすることを繰り返していく。これらは,ティーチングしたデータを利用してティーチング時間を短縮する例である。
次にティーチングポイントを減らすことを目的として,多層盛り機能やポジショナとの協調制御がある。多層盛り機能は,初層だけティーチングして,2層目以降は初層に対する狙い位置のシフト量を表の中に書いていくだけで多層盛りのティーチングが完成する。ポジショナとの協調制御を用いると曲線のティーチングポイントが格段に少なくなるし,溶接姿勢も理想的になるから,修正も少なくなり,効率的である。
溶接条件を設定することや管理することもティーチング時間を左右するが,溶接条件のデータバンク機能を利用すると効果がある。また,すみ肉や突き合わせの条件が予めロボットの中にセットされている自動条件設定機能を利用すれば,脚長や板厚だけを指定することで最適条件の溶接ができるため,溶接条件のトライアル時間が省略できる。
オフラインティーチングもティーチング時間の短縮には極めて有効な手段で様々な分野で使われている。
鉄骨分野では,図1に示すような画面でコラムのサイズや板厚などの寸法を入力するだけで,ロボットの軌跡から溶接条件まで自動的にティーチングデータができるシステムが普及している。これらのシステムには,コラム溶接,仕口溶接,柱大組立溶接など,システムごとにメーカーが作成した自動プログラミングシステムで対話式に入力する。ティーチング作業のウェイトは,溶接時間に比べて極めて少なく,またロボットの操作を知らなくともできる特徴がある。
橋梁分野においては,2次元CADに溶接線情報を加えたデータをオフラインシステムにダウンロードして,ここで3次元データを作成して,自動軌跡生成を行う。この過程では,トーチと部材の干渉をチェックして,自動的に溶接線短縮や削除を行う。特殊な継手に関しては,図2のように干渉チェックをして安全性を確認した後,溶接を実施する。橋梁分野の溶接もこのようにして,自動的にティーチングデータが作成される。
造船も上位のCADデータを用いて橋梁と同様なプロセスでティーチングデータを作成する。上位のCADシステムが独自のシステムであるためカスタムなシステムが構築されるケースが多い。
建設機械のような一般的なシステムでは,3次元のCADで書かれたワークに対し,そのCADの中に溶接情報を入れて,自動的に軌跡と溶接条件を生成するシステムが採用されつつある。普遍的なワークに対して完全な軌跡を生成できない場合もあるので,図3に示すようにティーチング画面で修正することが必要である。
一般のワークでも類似性がありパターン化できるものは,鉄骨システムのような画面で寸法入力するプログラミングシステムを作るケースも増加している。
このようにティーチング時間の短縮技術は進歩を重ね,少量多種生産品のロボット化を推進している。
〈丸山 徳治〉