- 接合・溶接技術Q&A / Q07-09-10
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Qロボットの用途を変える場合,例えばアーク溶接からガスあるいはプラズマ切断に換える場合には,どんな課題が発生しますか。
溶接ロボットを切断用ロボットとして使用している例があるが,このような場合,次の課題がある。
(1) 切断性能上の問題
溶接ロボットは,6軸ロボットの垂直多関節型が主流である。ロボット先端の位置制御は6個のモータ(エンコーダ付き)により行われている。切断の場合,鋼板面とトーチ先端との距離を一定に保つことが重要で,特に切断面の粗さに影響を与える。垂直多関節型ロボットの上下方向の制御は,一般に切断専用自動機に採用されている直角座標型の制御(上下モータ1個の制御)に比べて,複数のモータの制御になる。例えば,直線を切断する場合,直角座標型であれば上下位置制御モータと水平位置制御モータの独立制御であるが,垂直多関節型であれば,各軸の合成状態で切断することになり,この影響が,切断面の粗さの差となってくる。実用上の溶接工程での影響は少ないが,切断面の差があることは認識しておくべき事項である。
図1に直角座標型と関節型の構成を示す。
(2) 機能上の問題
一般的な溶接ロボットは,切断ロボットとして必要な機能が不足している。例えば,切断の前の予熱~切断開始および終了時の対処などのシーケンスが内蔵されていない。この場合,ティーチングで個々のポイントで信号のON-OFFを入力する必要があり操作としては煩雑となる。また,鋼板面とトーチ先端の距離を一定に保持する上下センサが内蔵されていないので,切断中の上下の鋼板変形には追随できないなどの問題点がある(特にプラズマ切断)。
このように,切断に適した機能の不足があり,また機種によっても異なるので,ロボットメーカとよく打ち合わせる必要がある。
(3) 電源との組合せ
プラズマ電源の中には入力端子の不足から,インターフェースを介してロボットに接続しなければならない電源もある。事前によく電源回路図などを確認する必要がある。
(4) ノイズ問題
プラズマアークは,高周波を発生させスタートする必要がある。電源側のノイズ対策が不十分なものもあり,問題が生じるケースもある。
参考文献
1)(社)日本ロボット工業会:ロボットハンドブック,p.78,(1995)〈竹内 直記〉