- 接合・溶接技術Q&A / Q07-10-06
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Qガスの種類と違った火口,吹管を使用した場合の危険性や問題について教えてください。
1 燃料ガスによって,火口,吹管を変える理由は
まず,燃料ガスによって火口・吹管を変える理由を説明すると,燃料ガスによって性質が違うために,専用の火口および吹管が用意されているから,ということです。図1を見て下さい。アセチレン用とLPG用の切断火口の構造を示しています。火口の違いとしては,燃料ガス(アセチレン,LPG)と予熱酸素が混合されて放出される出口の形状が異なっています
LPG用は,出口に歯車(ギヤ)状に加工されたスリット部があり,さらに,段差部分があります。これに対して,アセチレン用の場合,出口には6つの小さな孔(梅鉢形と呼ぶ。)があり,段差部はありません。アセチレン用には,この形状以外にも,出口がリング状のもの(蛇の目形と呼ぶ。)もあります。
これら切断火口の構造の違いは,二つのガスの燃焼特性が関わっています。LPGの主成分はプロパンですので,それぞれのガスの最低着火温度および燃焼速度を抜き出して,表1に示します。この表より,アセチレンは火がつきやすく,燃焼速度が速いガスといえます。
予熱炎は切断火口先端で安定に燃焼しなければなりません。プロパンの場合,表1を参照すると最低着火温度が高く,これは点火しにくいということであり,操作性が悪くなります。また,燃焼速度が遅いということは,予熱混合ガスの火炎は予熱ガスの流速に打ち負かされ,切断火口先端で燃焼せず,流速が遅くなる切断火口遠方部で燃焼するということになります。このために,プロパン用の切断火口は,歯車状の部分および段差部分で予熱ガスを加温し,着火しやすくするとともに燃焼速度を高めているのです。また,加温の熱源は予熱炎自身です。
一方,アセチレンの場合,最低着火温度が低く点火しやすいため,操作性はよいのですが,燃焼速度が速いことが問題となります。このため,アセチレンを含む予熱混合ガスは,この速い燃焼速度に打ち勝つ流速で切断火口先端から噴き出させなければ,予熱炎が切断火口内部に戻り,逆火が発生するため非常に危険です。アセチレン用切断火口の構造は,段差部を作らず,単純に予熱混合ガスを大気に放出できる構造とし,予熱炎が安定して維持できるように,予熱混合ガスの出口孔径および供給ガス圧が決められています。
プロパン用切断火口の構造はアセチレンを除く他の燃料ガスに採用されていますが,すべて,それぞれの燃料ガスの燃焼特性に応じて,歯車形状および段差部分の形状が決められています。
前述で中圧切断火口を例にとり,燃料ガスによって切断火口の構造に違いがあることを説明しました。中圧切断火口も手動用として使用できる吹管が用意されていますが,ここでは,一般に,低圧(切断)火口および低圧(式)切断吹管と呼ばれている手動切断専用の火口および吹管の違いについて説明します。
図2に低圧(切断)火口を示します。この図と中圧切断火口との違いは,次のとおりです。
(1)予熱炎混合ガスの供給
火口へのガスの供給は,中圧切断火口の場合,切断酸素,予熱酸素及びアセチレンまたはLPGとなっているのに対し,低圧(切断)火口は切断酸素および予熱炎混合ガスとなっています。すなわち,低圧(切断)火口は,あらかじめ混合された予熱炎用ガスが供給されていることが中圧切断火口と異なります。予熱炎混合ガスは吹管内部で作られますが,その混合比は使用する燃料ガスによって異なります。これについては,2)低圧切断吹管の構造のところで説明します。
(2)火口先端形状
LPG用の火口の先端形状は中圧切断火口と変わりがありませんが,アセチレン用の火口の先端形状は変わっています。このタイプは「蛇の目形」と呼ばれる同芯型になっています。これらの先端形状の違いは,やはり,前述で説明したそれぞれの燃料ガスの燃焼特性の違いによるものです。
低圧(式)切断吹管の構造(インジェクタの構造)低圧(式)切断吹管の内部にはインジェクタという機構が内蔵されています。この機構は霧吹きを想像してください。(図3)霧吹きでは,オリフィスから空気を勢いよく吹き出させると,水タンクの中の水が吸い上げられ,霧が発生します。これと同じ原理が低圧(式)切断吹管に組み込まれています。空気に相当するのが酸素で,水に相当するのが燃料ガスです。
予熱炎用ガスはそれぞれの燃料ガスに応じて適正な混合比に混合されますが,このためにインジェクタ内部に設けられたオリフィスの口径がそれぞれの燃料ガスに応じて定められています。したがって,低圧(式)切断吹管の場合は,燃料ガスに応じて,切断火口とともに吹管の種類も選定する必要があります。なお,中圧切断火口を接続する吹管は,ガス切断に必要なガスが,それぞれ単独に供給されるため,このような問題はありません。
2 火口仕様と異なるガスを使用した場合の危険性と問題
前述で,燃料ガスによって火口や吹管の組み合わせがあることを説明しました。ここでは,この組み合わせを間違えた場合の危険性および問題点について,最も分かりやすい例として,アセチレンとプロパンを考えてみます。
1)火口の場合
(1)プロパン火口にアセチレンを使用した場合。
1項で説明しましたように,プロパン火口にはプロパンを加温するために,歯車(ギヤ)形状および段差部分の加工が行われています。この火口にアセチレンを流すということは,アセチレンを加温することになります。これは,元々,燃焼速度の速いガスの燃焼速度を,さらに速めることになり,逆火の可能性が高くなることを意味します。すなわち,プロパン火口にアセチレンを使用した場合は,逆火の危険性が非常に高く,危険であるといえます。
(2)アセチレン火口にプロパンを使用した場合。
プロパンを安定して切断火口の先端で燃焼させるためにはプロパンを加温する必要があることは既に説明しました。したがって,ギヤおよび段差部分による予熱機構をもたないアセチレン火口にプロパンを流すと,予熱炎は切断火口からのガスの流速に押し流され,火口から離れた位置で安定するか,もしくは吹き消えて(ブローアウト)しまいます。非常に操作性が悪くなります。
2)吹管の場合
吹管には,これに接続する火口が低圧のものか,中圧のものかによって,それぞれ,低圧式,中圧式がありますが,ここでは,低圧式が対象となります。中圧式の場合は,吹管内部にインジェクタ(1項)をもっていませんので,対象とはなりません。
(1)プロパン用低圧吹管にアセチレンを使用した場合。
アセチレンを使用するので,切断火口はアセチレン用が使用されているものとします。プロパンは燃焼する際,アセチレンに比べて酸素を多く消費するので,吹管内部での酸素の供給は,プロパン用低圧吹管の方がアセチレン用低圧吹管よりも多く供給できるようになっています。したがって,プロパン用低圧吹管にアセチレンを使用した場合,アセチレンに対して酸素過剰となり,予熱炎は酸化炎となり,炎調整が困難になります。
(2)アセチレン用低圧吹管にプロパンを使用した場合。
プロパンを使用するので,切断火口はプロパン用が使用されているものとします。この場合は,(1)で説明したこととまったく逆になります。
すなわち,アセチレンは燃焼する際の酸素消費がプロパンに比べて少なくてすみます。したがって,酸素供給量が少ないため,アセチレン用低圧吹管はプロパン火口が要求する酸素量を供給することが困難になります。予熱炎は酸素不足,すなわち,還元炎となり,火炎調整が困難になります。
参考文献
要説 熱切断加工のQ&A 日本溶接協会 ガス溶断部会〈畠山 航 / 2012年[新規]〉