- 接合・溶接技術Q&A / Q10-01-04
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Qアルミダイカストマシンのプラテンが摩耗した場合,装置を分解することなく,現場で溶接肉盛するとともに肉盛部の仕上げ加工も行う方法があると聞きましたが,どのような手段で溶接肉盛し機械加工を行うのか教えて下さい。
近年,自動車工場などのアルミダイカストマシンのプラテンの金型取付部の摩耗個所の補修は,装置を分解することなく,ダイカストマシン内に機械工具類を持ち込み,時には土日2日間休日の短期日で,プラテンの金型取付部の摩耗箇所を溶接または溶射でオーバーレイし,組立のまま専用機械加工機で,平行度,平面度を修正している。
施工手順としては,
(1) 溶射の場合(母材:SCまたはFC材)
《洗浄,油焼き》→《縁盛り溶接》
→《ショットブラスト》→《ボンド材溶射》
→《アーク溶射(線材:ステンレス鋼)》
→《肉盛面切削》
(2) 溶接の場合(母材:SCまたはFC材)
《洗浄,油焼き》→《縁盛り溶接》
→《全面溶接(鋳鉄用ニッケル系またはステン
レス鋼)》→《肉盛面切削》
溶接肉盛の場合は,後工程の機械加工の工程短縮のために,横向姿勢でいかに薄く肉盛溶接できるかが,溶接士の技術的な大きな要素となっている。
溶接は,被覆アーク溶接法が主流であるが,大型のダイカストマシンの場合は,肉盛能率向上のためにフラックス入りワイヤによるマグ溶接法も採用されている。
参考までに,アルミダイカストマシン・プラテン溶接完了・溶射完了・プラテン平面加工・機械加工完了の写真を示しておく。
このように,大型設備の補修には機械加工作業を伴うが,加工対象設備の取り外しが非常に困難であったり,取り外すことに多額の費用と工期を要するのが通例である。
そこで,現地での溶接を含めた現地加工は,これらの悩みを解消するための最適手段で,設備を取り外すことなく,当該設備現場で肉盛溶接を行うとともに目的の機械加工を行い,補修時間および設備休止時間の短縮を図ることができる経済的補修方法として脚光を浴びている。
現地機械加工の代表的な例としては,次のようなものがある。
① 損耗部を最小限度追い込み加工する。
② 摩耗穴をオーバーサイズ加工する。
③摩耗部の溶接肉盛を行った後の修正仕上げ加工をする。
現地機械加工には次のようなメリットがある。
① 設備を分解する手間が省ける。
② 修理の工期が短縮され,ラインストップによるロスのミニマム化が図れる。
③ 機械加工方式であるから,新品に近い精度に復元できる。
参考文献
1)特殊電極(株):設備解体の手間を省くアルミダイカストプラテン現地加工2)特殊電極(株):設備解体の手間を省く現地機械加工
3)特殊電極(株):最近の特殊溶接工事施工実績一覧
〈東 雅弘〉