- 接合・溶接技術Q&A / Q10-01-05
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Qロータリーキルンおよびドライヤーのタイヤの更新工事は,シェル本体を切り離し,新作したタイヤをはめ込んだ状態で,シェル本体胴部を溶接でつなぐのが通例ですが,シェル本体を切り離すことなく,二分割したタイヤを既存のシェルにはめ込み,溶接によって一体構造にする施工法があると聞きました。その施工法について教えて下さい。
従来,セメント,製紙,化学工業関係で使用されているロータリーキルンおよびドライヤーの傷んだタイヤの更新工事は,タイヤ装着部分のシェル本体胴部を切り離し,改めて新作したタイヤをはめ込んだシェルを製作し,既存のシェル本体胴部と溶接でつなぐのが通例であった。
この従来方式で施工すると,必然的にキルン内面の耐火煉瓦もすべて取り替えることになり,かなりの大工事となる。
したがって,最近はシェル本体を切り離すことなく,古いタイヤのみを取り外し,別途2分割したタイヤを製作し(写真1),新しいタイヤを既存のシェルにはめ込み,溶接によって一体構造とする施工法で行われるようになった。
この施工方法の確立により,従来工法よりも工期の短縮,工事コストの削減が可能となり,また,キルン本体を疵つけることもないので,キルンの寿命延長にもつながっている。
私達が今までに取り替えたキルンタイヤの最大径のものは,Sセメントの,タイヤ材質:SF540A,外形:5,505f×750W,内径:4,705f×750Wのものである。
作業工程の一例を説明すると,下記の①~⑳の工程となる。
《①キルン運転停止後,ジャッキアップ》
→《②作業足場組立》
→《③旧タイヤ切断および取り外し》
→《④ライナープレート,振れ止めリング切断および取り外し》
→《⑤シェルおよびタイヤ下の掃除手入れ》
→《⑥新作ライナープレート,タイヤリング溶接》
→《⑦新タイヤのはめ込み(3時⇔9時方向)(写真2)》
→《⑧拘束材溶接,合わせ金具の切断》
→《⑨タイヤ回転(90°)(9時→12時方向)》
→《⑩内径側開先部溶接(写真3)》
→《⑪タイヤ回転(90°)3時⇔9時方向)》
→《⑫外径側開先加工(エアガウジング)》
→《⑬外径側開先部溶接(写真4)》
→《⑭拘束材切断および均熱徐冷》
→《⑮外径表面グラインダー加工,ゲージ合わせ》
→《⑯溶接部非破壊検査(浸透探傷試験,超音波探傷試験) (写真5)》
→《⑰熱処理(電気焼鈍)625±25℃》
→《⑱タイヤ外面手入れおよび検査(浸透探傷試験)》
→《⑲作業足場およびジャッキ取り外し,除去,清掃》
→《⑳試運転》
このキルンタイヤ取替工事で,もっとも困難なものは,⑩内径側開先部溶接で,この部分の溶接には,横置き溶接棒をオーダーメイドして使用している。
このキルンタイヤ2分割簡易取替工事を行ったキルンは,現在まで何一つトラブル発生もなく,順調に稼働している。
参考文献
1)特殊電極(株):キルンタイヤ2分割簡易取替工事〈東 雅弘〉