- 接合・溶接技術Q&A / Q10-01-08
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Q炭素鋼にホワイトメタルや鉛等の低融点合金をティグ溶接法で肉盛溶接ができると聞きましたが,本当でしょうか。
ホワイトメタルや鉛等は,従来から遠心鋳造法または鋳掛け法で炭素鋼母材に肉盛していた。
しかし,鋳掛け法の場合は,炭素鋼母材との接着強度に不安があった。
この接着強度の安定化を図って,ティグ溶接法による低融点合金の肉盛が行われるようになり,最近では,発電機,船舶,機械,製鉄関係の装置部品のホワイトメタルおよび鉛のオーバーレイに,幅広く採用されてきている。
ティグ溶接法を採用することにより,下記のような利点が得られる。
① 母材の前処理が機械加工またはグラインダー仕上げのみと,非常に簡単になる。
鋳掛け法による場合は,低融点合金の接着強度を高めるために,母材表面に溝加工,ブラスト処理,錫メッキなどを行うが,これらの前処理が不要となる。
② ティグ溶接法の場合は,溶接金属の余盛が非常に少なくできるので,機械加工工数がかなり低減できる。
③ 優れた接着強度が得られるとともに,ポロシティなどの欠陥もほとんど発生しなくなる。
従来,鋳掛け法の場合は,接着強度が49MPa前後であったものが,980MPa以上の安定した強度が得られるようになる。
低融点合金のティグ溶接法による肉盛溶接は,溶接施工条件に若干のノウハウがあるが,溶接熱によって母材が過熱しないような対策を講じて,スプール巻きされた4fのワイヤを使用し,全自動ティグ溶接法で肉盛する。
参考までに,ホワイトメタルの溶接施工中および肉盛溶接完了後の外観写真ならびに溶接境界部および溶接金属のミクロ組織を示す。
参考文献
1)特殊電極(株):LET'S CHANGE THE CASTING FOR THE WELDING NOW!〈東 雅弘 / 2012年改訂[SI単位]〉