接合・溶接技術Q&A / Q10-04-03

Q既設建築鉄骨の耐震診断で下記の2項目について具体的な補強方法を教えて下さい。①CT形鋼による柱および梁の補強方法,②カバープレート方式による補強方法。

(1) CT鋼方式による柱の耐力を向上させる方法(図1に例を示す)

全塑性モーメントを向上させるために,CT形鋼を柱フランジ外側に溶接するための注意事項を次に示す。

① 溶接熱や塗装の影響を避けたい場合や裏当て金がありカバープレートが不可能の場合はT形鋼を用いる。

② 全塑性モーメントは,T形鋼による増加分を加えた値とする。

③ 全塑性モーメントに見合う溶接とする。

④ 柱の成が大きくなるので,周囲に余裕が必要である。

⑤ 幅厚比を満足しない場合は,水平リブを適当な間隔で設ける。

図2は,CT形鋼方式による梁の耐力を向上させる方法の例である。

全塑性モーメントを向上させるために,CT形鋼を梁フランジ外側に溶接するための注意事項を次に示す。

⑥ 補強上の注意事項は,柱の場合に準じる。

⑦ 仕口部の応力伝達に注意する。

(2) カバープレートによる柱および梁の耐力を向上させる方法

図3はカバープレートによる柱の補強例である。全塑性モーメントを向上させるために,柱フランジにカバープレートを溶接するための注意事項を次に示す。

① 既存溶接部の余盛,裏当て金などで溶接に問題がある場合は,それらを除去した後に溶接する。

② 不良溶接の原因となる塗装は完全に取り除く。

③ 既設柱の歪みやカバープレートの溶接熱により柱との接触面に問題が起こりやすい。

④ パネル補強部は直交梁や筋かい用ガセットプレートがあり,補強不可能となる場合がある。

⑤ カバープレートが梁ウェブに接する箇所のすみ肉溶接は,あまり期待できない。

図4はカバープレートによる梁の補強例である。梁の全塑性モーメントを向上させるため,梁フランジにカバープレートを溶接するための注意事項を次に示す。

⑥ 補強上の注意事項は柱の場合に準じる。

⑦ 上側のフランジは,床があるためほとんど補強できない場合が多い。

⑧ 仕口部の応力伝達に注意する。

参考文献

1)田極義明:補修・補強は大丈夫か,鉄構技術,pp.47-48,鋼構造出版,(1998.7)

2)東京都都市計画局編:建築物の耐震診断システムマニュアル(鉄骨造),(財)日本建築防災協会,(財)東京建築防災センター,(社)東京都建築士事務所協会,pp.135-157,(1990.2)

〈松本 正巳〉

このQ&Aの分類

鉄骨工事

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耐震補強製品名:建築鉄骨材質:SN400A/B/C,
SN490B/C
施工法:被覆アーク溶接,ガスシールドアーク溶接,セルフシールドアーク溶接

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