- 接合・溶接技術Q&A / Q10-05-08
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QAl合金の溶接ビードに割れが見つかりました。どのような項目に留意して溶接施工すればよいですか。
(1) 割れの発生している部分は,必ずグラインダやカッタ等により完全に除去する。割れが無くなったことを浸透探傷により確認するのが望ましい。割れ除去後の溝の形状は溶接が適切に行えるよう必要に応じ整形し,特に切削部の両端の勾配はできるだけゆるやかにすれば(30°以下)欠陥が発生しにくい。
(2) 溶接補修する母材の材質を確認し,適切な溶接材料を選択する。
特に熱処理合金は補修溶接でも軟化による強度低下がおこるので,注意が必要である。
たとえば,A6061-T6材を補修溶接した場合,母材と同じ強度を得るには,再T6処理を施す必要が出てくる場合もあるので設計部門への確認が必要である。
(3) 溶接法としてはTIG溶接およびMIG溶接どちらでもよいが,TIG溶接の方が品質的に安定しており,施工面でも補修溶接には適している。
(4) 溶接条件としては,1パス当たりの溶接入熱をできるだけ少なくすることが重要であり,溶接層間温度も50℃以下にする必要がある。
(5) 割れが母材まで進行している場合で,割れが短い時には上記(1)と同じ方法でよいが,割れが長い時は割れ発生部を近傍ごと切り取り,共材の埋め板を作り,溶接する。
(6) 補修溶接が完了後,浸透探傷あるいはX線透過検査で欠陥の無いことを確認する。
参考文献
1)松本二郎:アルミニウム溶接の不良対策/百問百答,軽金属出版(株),p.12,(1979)2)溶接設計・施工管理技術者教本,(株)産報,(1973)
〈後藤 浩二 / 2012年改訂[加筆]〉