- 接合・溶接技術Q&A / Q10-06-10
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Q微生物腐食の補修方法を教えて下さい。
微生物腐食に特有の補修方法はない。通常の腐食の場合と同様の方法で補修を考える。炭素鋼の硫酸塩還元菌によるような全面腐食に近い場合には,腐食部位全体を取り替えるしか仕方がない。問題は,ステンレス鋼の塩化物環境下での局部的な微生物腐食である。溶接金属部に孔食が生じた場合には,腐食箇所を除去した後,よりCr,Mo量の高い溶接材料で補修肉盛するのが容易な方法である。それまで溶接材料として304を使っていたならば,316Lあるいは309MoLを使うといった具合である。このような1ランク上の高級な高耐食性溶接材料の使用がリコメンドされる。実際,SUS304製水門の溶接部に発生した微生物に起因したピットを309MoLで補修肉盛して,それ以降トラブルなく順調に稼動している事例もある。なお,溶接肉盛した際に生成する溶接スケールは,酸洗あるいは平滑な研磨により除去する。グラインダーを使用した粗な研磨では,孔食感受性が逆に高まってしまう場合もあるので避けるべきである。図1に示すように,308溶接金属部は,アルミナでのバフ研磨では腐食電位は貴なままで微生物腐食は発生しなかったのに対し,シリコンカーバイドNo.600番研磨した場合には,途中から腐食電位が急激に低下し,微生物腐食が発生したことを示している。このことは,表面が粗になると微生物腐食感受性が高いことを物語っている。
参考文献
1)R.A.Buchanan:Proc.Int.Cong.on MIC.Knoxville,TN,3-99,(1990.10)〈幸 英昭〉