- 接合・溶接技術Q&A / Q10-07-09
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QCr-Mo鋼配管裏波溶接におけるバックシールドの必要性につい教えて下さい。
配管の溶接は片側溶接施工が基本であり,良好な裏波形状を得るために初層溶接はTIG溶接が採用されている。この際,初層ビード裏面は大気にさらされるため酸化し,ビード外観不良,気孔や割れなどの溶接欠陥が生じることがある。
酸化の程度は材質により異なり,炭素鋼やCr量の低いCr-Mo鋼では問題とならない。しかし,Cr量の多いCr-Mo鋼やステンレス鋼,高合金,チタン,アルミニウムなどでは,過剰酸化を生じやすい。
このため,これら材料の初層TIG溶接時には,酸化防止のため,裏面からアルゴンなどの不活性ガスによるバックシールドが行われている1,2)。5Cr-1Mo鋼初層溶接のバックシールドの有無による裏波形状の違いを写真1に示す。バックシールド無しの場合には,過剰酸化が生じ裏波形状の凹凸が激しくなっているのがわかる。
しかし,炭素鋼やCr量の低いCr-Mo鋼の片面TIG施工においては,合金元素量が低く,酸化も可能性も低いため,バックシールドは行われないのが一般的である3)。
石油・化学プラントの機器・配管における初層TIG溶接では,炭素鋼および11/4Cr-1/2Mo鋼まではバックシールド無しに施工されるが,21/4Cr-1Mo鋼以上についてはバックシールドを行い施工されている。
参考文献
1)AWS D10.6-85:Recommended Practices for Gas Tungsten Arc Welding of Titanium Pipe and Tubing2)AWS D10.4-79:Recommended Practices for Welding Austenitic Chromium-Nickel Stainless steel Piping and Tubing
3)AWS D10.11-87:Recommended Practices for Root Pass Welding of Pipe Without Backing
〈岩本 博之〉